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343話 酒は飲んでも飲まれるな1

343話 酒は飲んでも飲まれるな1



「あ、見て見てゆーし! 薫ちゃんとひなちゃんが申し込みしてるよ〜?」


「ほんとだ。てか思ってたよりも大々的にやるんだな。申込者で列になってるし」


 大体二十人程度だろうか。ゲリラの小規模大会と聞いていたから十人も集まらない大会だと思っていたのだが、たまたまこの海辺にそのゲームを好きな人が多かったのか。はたまた一瞬にしてそれくらいの人数を集められるくらいゲームそのものの知名度が高いのか。どちらかは分からないが、あの二人だからと簡単に優勝を狙える環境ではないのかもしれないな。


「ゆーしはどう思う? あの二人。友達以上の関係になっちゃったりするのかな……」


「どう、なんだろうな。蘭原さんにその気があるのは間違いないと思うんだけどいかんせんなんでか在原さんが鈍いからな。あ、でもたしかあの人イケメンでも美少女でもウェルカム、みたいなこと言ってなかったっけ?」


「ふふっ、これは今後の展開にも期待だね。お似合いだと思うし、案外きっかけがあればすんなりいっちゃうかもよ〜?」


 楽しそうだなコイツ。


 まあ俺も少なからず応援はしているけども。実際お似合いなのは間違いないと思うしな。蘭原さんは狂おしいほどに在原さんを好き(それもloveだとしてもおかしくないほどに)なのは確定として、あとは在原さん次第か。仲はいいし気に入っているのも間違いない。問題はそこからただの友達として日々を過ごせるかどうかなわけで。


「えへへ〜。もしかしたらカップルが三組になっちゃうかもにゃあ。はっ! つまりこれって私たちにとってライバルが増える……ってコト!?」


「なんでそうなる」


 本当、イチャイチャが絡むと変に対抗心を燃やすな。……まあ俺も「お前たちより私たちの方が好き合ってるぜ〜!」とか言われたらちょっと自分がどういう行動を取るか想像がつかないけども。考えるだけ恥ずかしくなるからもう止そう。


 ピークの昼時が過ぎて海の家から続々と人が海辺に戻り出し、気づけば周りにどんどん水着姿の男女が増えていく。


 俺たちはそんな中談笑しながら歩いていたのだが。前方から何やら大きな声が聞こえ、足を止めた。


「ちょ、やめてください! 周りの方々の迷惑になっていますから……っ!!」


「うるへぇ! テメェ何の権限があって俺の邪魔をしてんらぁ!? せぇっかく気持ちよく海でバカンスしてるのってのによぉ!! 気分を害すんじゃねぇタコが!!」


 少し人だかりにもなっており、そんな怒号から少し離れた俺たちの前に溜まっている人たちは一点を見つめながらヒソヒソ話をしている。


 どうやらライフセーバーの人とおじさんが揉めているようだった。いや、正確にはおじさんが一方的に絡んでいる、と言うべきだろうか。


 なんにせよ災難だな。そういう人をああやって抑えるのも仕事のうちなのかもしれないけれど。こういう場だからついついお酒を飲み過ぎて暴走してしまう人も少なくないだろう。


 ま、とりあえず俺たちには関係のないことだ。


「ちょっと大回りして行くか。絡まれても嫌だしな」


「う、うん。そうだね……」


 ヤバい人なんて街中にだっていくらでもいる。けど相手がどれだけヤバい人でも結局は関わらなければ普通の人と違いはないわけで。トラブルに巻き込まれる前にとっととこの場から離れて────


「オイテメェら見てんじゃねえぞコラ!! どいつもコイツもブスばっかり……お? おぉ? お〜お〜? なんだ、いるじゃねぇかよ。たまには面のいい女もよ〜!」


「へっ……?」


「あっ!? ま、待って!」


「離せ!!」


「っぐ!?」


 その瞬間。太っているその男の濁った視線が由那と交錯する。


 ライフセーバーの人は何かを察知し止めようとしたところを顔面に肘打ちを喰らい、鼻を抑えながらその場に倒れ込んだ。そしてそれと同時に。男はこちらへと近づいてくる。


「へっへ。オイ嬢ちゃん、俺のテントに来いよ。一緒に呑もうぜぇ〜?」


「ひ……っ」



 嘘、だろ……。

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