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341話 独壇場

341話 独壇場



 デデドンッ、と凄みを効かせながら。在原さんは両肘を机に立てた状態で上官のような姿勢をとる。


 作戦会議か。まあ確かにここからは本当に予定が無い。残りの時間、いかに悔いを残さずここを去る時間を迎えることになるかはこの会議にかかっていると言っても過言じゃないな。重要な会議になりそうだ。


「まず最初に。私とひなちゃんはこの後別行動をとる。どうしても外せない用事ができちまったからな」


「どうしても外せない用事? 何よそれ」


「ふっ。これを見な」


 一体どこから取り出したのか。在原さんはテーブルの上に一枚のチラシを乗せる。


「ゲーム……大会?」


「おうともよ。それも私とひなちゃんが一番やり込んでるゲームな。それのゲリラ大会がこの後受付を開始するらしい。公式のどでかい大会とかじゃないから賞金とかが出るわけじゃないけど景品はある。私とひなちゃんは腕試しも兼ねてそれを掻っ攫いに行くことに決めたのだ!」


 ブレないなぁ、ほんと。別行動なんて言うから何かと思ったがそういうことか。確かにゲーム関連じゃ二人についていくことはできないしな。必然的に別行動になるというわけだ。


「ちなみに景品って?」


「アメゾンギフトカード三万円分!! ふぇっへっへ……これさえあればコントローラーの新調も気になってたあれやこれやのゲームソフトの購入も思うがままだぜ!!」


「あー……」


 もうそれはほぼ賞金と変わらないな。実質的に現金と変わらない扱いでネットショッピンができるカードなわけだし。


(にしても、別行動か……)


 正直海に入ること以外何も考えてなかった。こうやって海の家でごはんを食べるくらいは想定していたものの、なんなかんやで遊んでいたらすぐに時間が来てしまうだろうと。


 寛司達はどうするのだろう。どこか行き先を決めていたりするのか?


「なら俺と有美は海辺沿いにあるお店を巡ってみようかな。ちょっと調べたんだけど結構おしゃれな雑貨屋さんとかも多いし」


「え、そうなの? 楽しみ……」


「勇士達はどうする? こっちで一緒にまわってもいいし、まだまだ遊び足りないだろうから海で、ってのもいいと思うよ。まあ俺たちもある程度巡ったら戻ってはくるんだけどね」


「うーん、そうだな……」


 遊び足りないという気持ちはある。多分俺だけではなく由那もそう思っている事だろう。ならやはり俺たちは二人で海に残ろうか。


 なんて、そんなことを考えていると。隣で頭の上に電球を光らせたようにした由那が、俺の腕を引き寄せながら言う。


「私、ゆーしと一緒に行きたいところあるよ! 雑貨屋さんも楽しそうだけど、私たちは私たちで行こ!」


「へ? そう、なのか?」


「うんっ!」


 なんだそれ、初耳だけど。


 もしかして由那なりに気を遣ったのだろうか。俺と二人きりになりたいという気持ちが嘘ということではないだろうけど、寛司と中田さんが二人きりでのんびりデートできるのを邪魔しまい、と。


「そっかぁ。じゃあここからはしばらく完全に別行動だね。由那ちゃん、あんまりイチャイチャしすぎないようにしなよ?」


「ふっふっふ〜。有美ちゃんにだけは言われたくないにゃあ?」


「なっ……!」


 いや、違うな。


 なんとなくだが今、分かった。由那は二人に気を遣って雑貨屋に行きたいのを我慢している訳じゃない。


 ぎゅうぅ、と。身体の密着度が上がるとともに机の下でコソコソと近づいてきた手が、指を絡ませながら俺の右手を繋いでくる。


 力強い手繋ぎだ。まるで……ここからは遠慮しない。二人きりになったらもう逃さない、と。そう訴えかけてくるかのような。


「いっぱい……い〜っぱい、イチャイチャしようね。ゆーしっ♡」


「っつぅ……っ!!」


 

 どうやらもう、俺は彼女さんの独壇場に引っ張り出されてしまったらしい。

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