340話 食いしんぼの注文
340話 食いしんぼの注文
「えっ……と。ウマ辛カレー一つと焼きそば一つ。あとマンゴーかき氷一つで」
「あいよぉ!!」
生ビールと焼き鳥のみの先生と麺類を攻めた在原さんと蘭原さんが一セットで注文をし、その後に寛司と中田さんが続く。
焼き鳥、ぶっかけうどんに塩ラーメン、カレーに焼きそばか。和風や中華、洋風まで多数揃えている海の家ならではの注文光景だ。
さて、俺たちはどうしたものか。ちなみに一応俺はチャーハンを頼む気でいる。元気の良い店員さんがカウンターで注文をとる裏でご飯を炒めているのを見てからもう完全にその気分になってしまった。
「私チャーハンにしよっかなぁ。中華鍋で作ってる本格チャーハンなんて絶対美味しいもん!」
「なんだ、同じこと思ってたのかよ。流石いい着眼点してるな」
「ふっふっふ。彼氏さんも中々やりますにゃあ。でも二人で一緒のものを一個ずつ頼むのはちょっと勿体無いよね……。とりあえずチャーハンは二人で半分こするとして、他にも何か頼も?」
「そうだな。他ってなると……由那はなんか気になってるのないのか?」
「ポテト! 焼き鳥とたこ焼きとお好み焼きと唐揚げととうもろこし!!」
「……」
多い。多すぎますよ彼女さん。
いやまあ食いしんぼな由那のことだし、加えて俺と二人で分けるとなれば案外簡単にたいらげてしまえるかもしれないけども。この後まだまだ海で遊ぶためにもあまり満腹になりすぎない方がいいだろうし、もう少し控えめにしてもらわねば。
「ポテトと唐揚げととうもろこしはいいとして、たこ焼きとお好み焼きはどっちかでいいんじゃないか? どっちも味付けは似たようなものだろうし」
「むぅ? 言われてみればそうかも……。じゃあお好み焼きやめてデザート頼もうよ! ほら、有美ちゃんたちだってかき氷注文してたし!!」
「……まあデザートはいるか」
「うんっ!」
ダメだ。粉物が一つデザートに変わっただけだった。
せっかくの海の家。好奇心と食欲を我慢していては勿体ないか。お金もちょっとばかり高くなってしまうけれどここは後悔の残らない方を選択することにしよう。
「らっしゃい! 熱々のカップルさんは何にするんだい!?」
「あ、熱々!? えへへ、それほどでもありますなぁ」
「はいはい。後ろ行列なんからな。さっさと注文するぞー」
こうして。俺と由那は二人でチャーハン、焼き鳥四本、ポテト、唐揚げ、たこ焼き、デザートの練乳マスカットかき氷と大盤振る舞いな注文をしたのだった。
まあ幸い唐揚げとたこ焼きはそれぞれ四個入りと六個入りでそこまでサイズも大きくないし、注文数が多いだけで案外なんとかなる気もしてきた。海で色々と動いたからお腹もペコペコだしな。
「お〜い、由那ちゃんっ! こっちこっち! 席とってあるぞぉ〜!!」
「は〜い! わっ、八人席なんてあるんだ! あれならみんなで一緒に食べられるね!」
「だな。こんだけ混んでるのにいい席取ってくれたよ」
簡易的な木製の屋根と大量の椅子、机が並ぶ店内。既に時刻が十二時半に近いこともあって大盛況だったが、ちょうどよく俺たちも同じような人数で食事していたグループが食事を終えたのだろうか。店内進んで一番奥のテーブル席で番号札を持ったみんなが椅子に腰掛けていた。
「さあ二人とも座りたまへ。ここにいられるのもあと四、五時間だ。悔いを残さないよう最後の作戦会議をしないとな!」




