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339話 海の家

339話 海の家



 海には当然のように「海の家」なるものが存在している。


 まあ言うなればそれは海に来た人達専用の飲食店といったところか。焼きそばやカレー、かき氷にアイスクリーム等々。主に簡易的な食べ物や夏の風物詩がメニューとして並んでおり、どれも目移りしてしまうほど美味しそうだ。


「なぁオイ、見ろよあの子。あの真っ白な髪の子! クッソ可愛くね!?」


「その子もいいけどあの黒髪ロングの子もやべえな。パレオ似合いすぎだろ……」


「い〜や、お前ら分かってないな。俺のイチオシはあのフラフラした歩き方してる人だ。顔に精気は無いけどよく見るとめちゃ美人だし、あの若干のやさぐれ感がブッ刺さる!」


「え? マジかよ。あのおさげ髪の子が一番じゃねえの? ああいう地味だけど可愛い子って個人的にドストライクなんだが」


「ちっちっち。分かってない。分かってないぞお前ら。あの茶髪の子一択だろうが。明るくてみんなを引っ張ってくれる男勝りギャルなんてよぉ……俺ぁ現実で目にすることができるなんて思ってなかったぜ」


(視線、感じるなぁ……)

 

 しかしそうやってメニューを眺めていたのも束の間。多方面からの視線とひそひそ声が聞こえてきて、段々と落ち着かなくなっていく。


 そりゃそうだ。うちの女子組はやたらと全員が全員レベルが高く、学校にも多数のファンがいる。クラスで三大美少女ともてはやされる由那、中田さん、在原さんに加えて隠れファンが多いことで有名な蘭原さんに顔だけは良いから黙ってれば美人と評判の湯原先生。一人いるだけでも充分に視線を集めてしまう女子が五人も一ヶ所に集まっているのだ。こうなってしまっても仕方がない。


「んぇ? どーしたの?」


「いや。別に何も」


 だが、やっぱり彼氏としては彼女さんがジロジロと見られるのはあまり面白くないわけで。咄嗟に由那の後ろに回って男共の視線を遮ってしまった。


 自分でも無意識の行動に驚きつつも、即座にその意図を察した由那はにんまりと笑ってもたれかかってくる。


「えへへ〜。無言でそういうことしてくれるのは彼氏さんポイント高いにゃあ」


「……おぅ」


「あ、照れてる。可愛い〜♡」


「うるさいな。いいから並んでるうちに注文するもの決めとけって」


「は〜いっ」


 ったく。自分でも恥ずかしいんだから追い打ちをかけないでくれ。


 けどほんと、改めて見ると由那って死ぬほど可愛いんだよな。内面という要素を知らない赤の他人が相手であっても簡単にその容姿だけでハートを射抜いてしまうのだから。ジロジロ見られるのは嫌だがそんな彼女さんが自分のものであるというのにはちょっと優越感を感じてしまう。


「……」


「うぉっ? な、なんだよ。急に」


「……今、ゆーしのことかっこいいって言った女の人いたもん。私の彼氏さんなのに!」


 ぷくっ。突如頬が膨らみフグのようになって不満をあらわにした由那は俺の手を引くと、胸元でクロスさせて抱き寄せる。


「本当にそんな人いたのか? 俺は気づかなかったけど……」


「いたもん! きっと私からゆーしを奪おうとしてるんだ……。でも絶対、そんなことさせないから!!」




 寛司ならともかく、いくらなんでも俺相手にそんなことを思う奴はそうそういないと思うけどな。なんて思いつつも後ろから抱きついているようなこの状態がどこか落ち着いたので言わないでおこう。

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