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335話 後輩との再会2

335話 後輩との再会2



 自分で言うのもなんだが、昔はめちゃくちゃ真面目な学生だった。


 特にしたいこともなかったからそれとなく勉強をこなし、テストでもある程度高い点数をキープして。そんな私のつまらん学生生活で唯一青春の片割れを感じていたもの。


 それが────占い部だった。


「はぁ〜……何年ぶりだ? 最後に会ったのは私の卒業式の時か」


「えっと、私と湯原先輩が二学年差なんで……ああ、まあ数えるの面倒くさいっすけど三年ぶりくらいじゃないですかね」


「雑だなオイ。てか荒野は変わってないなぁ。ちょっと髪は伸びたか」


「先輩こそ。いいじゃないですか。心の奥底にあったものが前面に出た、って感じで」


「喧嘩売ってんのかテメェ」


 荒野は一言で言えば「調子乗り」な奴だった。


 私と同じで占いなんぞ毛ほども信じていないくせに占い部に入り、今はもう無いが当時蔓延していた何かしらの部活に入らなければいけないという空気を乗りこなして。適当に誰かとくっちゃべって帰るだけの生意気な後輩。ま、生意気な雰囲気は今も変わっちゃいないが。


 砂浜から離れて少し。昔からある感じの古びたたこ焼き屋の前で腰掛けると、煙草を取り出し────


「って、お前も吸うのか。なんか意外だな」


「人生何があるか分からないもんですよねぇ。ま、先輩はいつか吸いそうだなって感じしてましたけど」


「うるせえよ」


 というかコイツの名柄クッソ渋いな。私は今のお気に入りな銘柄に辿り着くまでに結構な種類を吸ったもんだがあれは本当に吸ったことがない。名前くらいは聞いたことがあるけれど、イメージとしては海外のイケおじが吸ってるやつだ。


「にしても何でお前がここに? 地元は私とそんな遠くなかったはずだろ」


「あ〜、まあ私はまだ大学生なんで。そろそろ就活で忙しくなりだす頃っすからそれまでに一人旅行でも……と。まさか先輩と再会することになるとは思いませんでしたけどね。そもそも地元で会った方がよっぽど楽ですし」


「そりゃそうだ」


 ポケットに入れていたライターで煙草に火をつけ、息を吐く。


 白い息が空中で霧散していくと共にスゥッ、と長い味が肺を通ると、さっきまでヤニ切れで落ち着かなかった身体がようやく平静を取り戻すのを感じた。


「あ、私にも火くださいよ」


「ライター持ってねえのか?」


「オイル切れちゃって。嫌っすよね〜、オイルライターって。かっこいいな〜って思って買ったはいいものの定期的にオイル切れ起こすんですもん。やっぱ普通のライターが一番っすよ」


「……分かる」


 私もその流れは経験者だ。というか喫煙者なら必ず一度は通る道だろう。


 やはりオイルライターはかっこいい。カチッ、と蓋を開けたときに鳴る金属音も、摩擦で火を付けるときのあの瞬間も。買った当初は何もかもがかっこよく見えて毎日持ち歩いたもんだ。


 しかしどうしても課題としてブチ当たる壁はオイル切れ。あれは意外と燃費が悪いし、私みたいなヘビースモーカーだとぶっちゃけ二日と持たない。そうすると結局使い捨てと言いながらもめちゃくちゃ長持ちするスタンダードタイプなライターに戻ってしまうわけで。二つ持ち歩くのも面倒だし、結局オイルライターは今部屋の引き出しの中だ。


「火、貰いますね〜」


「んぶっ!? ちょっ……」


「へへっ、先輩の火、ゲット〜」


 ジジッ、と私の煙草の先と、まだ火のついていない荒野の咥えている煙草の先端が合わさりあって。花火で火を分け合うあの時のように火を貰っていった。


「普通にライターで付けろよ。びっくりしたろ」


「え〜? だって先輩から直接貰った火の方が美味そうじゃないっすか。減るもんでもないですし」


「そ、それはまあ……。なら別にいい、か」


 何が私から貰った火の方が美味そう、だ。全く。




 相変わらず変な奴だな。

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