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332話 ぬりぬりイベント2

332話 ぬりぬりイベント2



 期待の眼差しと共にクリームの入った入れ物を渡される。


 どこからでも、って。コイツはどこからどこまでを俺に塗らせるつもりなんだ? 


 水着姿ともなれば日焼け止めを塗らなければいけない範囲は膨大。それこそかなり際どいところにもなる必要性が出てくる。まさかとは思うが、全てを俺に任せるつもりなんじゃないだろうな。


「ね〜ね〜、早くっ。どこからでもいいんだよ? 結局いっぱい塗らなきゃだもん。早くしないと海で遊ぶ時間無くなっちゃう!」


「んぐ……」


 俺が塗るまでとことん待つ、と。そういう意味を孕んでいそうな言葉だな。


 由那はこうなったら言っても聞かない。とりあえずどこを塗ってどこを塗らないのかというのは考えるのをやめて、安全に塗れる場所から大人しく始めた方が良さそうだ。


「分かった。塗ればいいんだな?」


「わ〜い! えっへへ、どこから塗ってくれるのかなぁ」


 容器の蓋を取り、手に白いクリームを出して。ある程度手のひらの上で薄く広げていく。


 やましい感情は無くせ。由那の身体にこれを塗り込むなんて中々に官能的だと感じるけれど今は考えるな。そんな妄想をしているうちは一生終わらない。


「んむ……んむにゃ……」


 そっと手を近づけると自然と目を閉じたので、ちょうど都合が良いからとまずは柔らかもちもちな両頬に触れる。


 お餅のように形を変えながら吸い付いてくるほっぺとクリームがついた俺の手の中で鳴る若干粘着質質な音を聞きつつも、動揺を表に見せることはせず。顔全体にクリームを塗り込んでいく。


 頬、鼻先、額。そして瞼の裏。指でなぞるようにして触りながらそれを広げた。


(まつげ長いな。肌ももちもちで、唇も……。ああ、ダメだ変な気分になってくるぞこれ!)


 顔はセーフティポイントだろうと思っていたが、違う。この愛らしく整った顔はむしろ凶器だ。少しでも気を抜けば唇を奪ってしまいかねない。それほどに俺を惹きつける魅力を持ち合わせている。


 このままでは不味い。そう思い、さっさと顔に塗るのを終わらせようと急いだ。無抵抗にされるがままな彼女さんの顔をしばらくなぞったり揉んだり。そうしてあっという間に全体に日焼け止めを塗り広げると、一旦手を離して────


「あ、ちょっと待って? お耳……まだシてもらってない」


「っ……!」


 ふわり。さらさらな横髪を耳にかけながら、由那は俺のことを引き留めて言う。


 髪で隠れがちなんだからそこは塗る必要ないんじゃないか? なんて思いつつも。そうやって出されてしまってはもう逃げられない。


「ひゃんっ。ん、ぁう……」


「お、おまっ! 変な声出すなよ!」


「だって……お耳、弱いんだもん。それにゆーしが変な触り方、するから……」


 あっという間に耳が赤く染まった。少し手で触っただけでこれだ。耳が弱いことは知っていたが、頼むからそんな顔をしないでほしい。こっちはもう色々と″キてる″んだからな。


「っ……ん。ぬちゅ、ぬちゅって……エッチな音、すりゅ……」


「だからぁ! エッチな音とか言うなって!!」


「ひにゃぁっ!? だ、ダメ! 強くシちゃ、ぁ……っ」


 コイツわざとか!? わざと俺の欲情を煽ってるのか!? 甘い声ばっかり上げやがって!!




 心の中で叫びつつも、必死に唇を噛んで感情を押し殺す。これは日焼け止め塗りだ。ただ塗ってあげてるだけだ。変なことなんてしてない。そうだ。俺は普通のことをしてるだけなんだ。

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