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329話 水鉄砲合戦5

329話 水鉄砲合戦5



「……」


「きゃっきゃ♪」


「ふふふふふっ♡」


 なんだこのとんでもない絵面は。


 女子高生二人が人を沈めて笑い合っている。在原さんも途中から抵抗をやめて水面に顔を沈めてから起き上がって来ないし。下手したら通報もんの光景だろこれ。


「……ぷあぁっ!? おま、お前らっ! 加減てもんを知らないのかぁ!? 死ぬわボケェ!!」


「あっ! 薫ちゃんやっと顔出したよ〜」


「ふん。これでちょっとは懲りた?」


「ぬっぐぅ……。恨むぞ。お前ら後で覚えてろよ……」


 あれ? なんでそこで俺を見るんだい。主犯格はどう考えてもそこの二人だろう。


 なんだその「お前が一番悪い」とでも言いたげな表情は。俺はただ唯一集中砲火を止められる人材でありながら止めなかったりなんならちょっとサポートしたりしただけだぞ。


「もう水鉄砲合戦は終わりだ! ったく。て……そういやひなちゃんは?」


 言われてみれば。向こうの頂上バトルはどうなっているのだろう。


 そう思い振り返ると、そこには一人の男の背中が。どうやらもうバトルは決着したようで、その男は背中で勝利を語っている。


「薫しゃん……負けちゃい、ました。私、負けちゃいました……」


「くっ。鍛え上げられたソルジャーでもあの完璧超人には敵わなかったというのか……。私が残りの奴らを引きつけてもなお、届かないなんてな」


「引きつける? なんかわざと囮になったみたいな言い方してるけどボコボコにされてただけじゃ────」


「やかぁしいッッ!!」


 しゅん、と肩を落としながら息を切らしている蘭原さんに、まるで先輩が後輩でも励ますかのような表情で近づいて。ぽんっ、と肩を叩く。


 どうやら在原さんの中で蘭原さんは寛司という絶対障壁を破るための最終兵器的扱いだったようだ。まあ確かに蘭原さんの銃捌きはちょっとチビりそうになるくらい凄かったしな。


 しかしやはり、戦った相手が悪かった。


「お前、本当にバケモンなのな。何やってたらそんな運動神経になるんだよ」


「ふふっ。それは内緒かな。まあ一応、有美に好きでいてもらい続けるために身体の維持をする努力はしてるとだけ言っておくよ」


「だけ……ねぇ」


 実は裏で人並みならぬ努力をしているのか。はたまた最低限の努力をしているだけで超人になれる生まれながらの天才か。どちらにせよやっぱりヤバいな、コイツは。絶対に敵には回したくない相手だ。


「しくしく。リア充どもが虐めてくるよぅ。よよよ……」


「うわぁ。びっくりするくらい嘘泣き似合わないわねアンタ」


 同意見だ。実際に悲劇のヒロイン並みの仕打ちを受けた直後だというのにここまで台詞が響いて来ないとは。ある意味流石だな。


「くそぅ。もう勝負事なんてヤメだ。ひなちゃん、一緒に浮き輪でぷかぷかしてようぜ」


「ぷ、ぷかぷかですか。……へぇっ!? か、薫しゃんと!? やります! やりますっ!!」


「お、おぅ。そうか? なら早速浮き輪取りに行くかぁ」


 というか、在原さんはいつもいつも俺たちのことをやれリア充だのバカップルだの言ってくるけども。


 あなたの隣にもちゃんと強過ぎるくらい愛情を向けてくれている人がいることになんで気づかないのか。俺たち目線から見たら在原さんだってもう充分に────


「ゆーし、私たちも行こ? 喉乾いちゃったし飲み物も買いに行きた〜い!」


「そうだな。休憩がてら一旦戻るか」




 ま、それを俺たちから伝えるのは野暮だってことは分かってる。どうせいつかはあの二人の関係も自然と進展していくことだろうしな。

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