表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

369/464

325話 水鉄砲合戦1

325話 水鉄砲合戦1



「「ふぅ……」」


 そしてそれから程なくして。俺と寛司は腕を軽く痙攣させながらも無事、全ての浮き輪とビーチボールを膨らませ終えたのだった。


 死ぬほどキツかったせいかようやく終わり気が抜けた。ぺたんっ、とお尻をシートの上に付けるとそのまま寝っ転がってしまいそうにもなったが、なんとか踏みとどまる。


「お疲れ様、ゆーし! 頑張った彼氏さんにはご褒美を贈呈しましょ〜! 何が欲しいのか言ってみて!」


「何あげてるのか決めてなかったのかよ」


「ふっふっふ。確かに何も用意してないけどぉ……私の身体なら、好きにしちゃっていいんだよ? だってこれはご褒美だもん♡」


「っ……」


 好きに、だと? なんて場所でなんて格好しながらなんて台詞を囁きやがるんだこの彼女さんは。


 つまりそれはあれか? 「ご褒美に私の身体を好きにしていいよ」ってことか? よくもまあ水着なんて男を欲情させるものを着ておきながらそんなことを言ってくれたものだ。こちとら人の目があるからとイチャイチャをかなり我慢しているというのに。


「ぎゅっ、する? それともなでなで? ちょっと恥ずかしいけど、キスでもいいよ? 大人のは……ううん、ゆーしがシたいって言うなら、私は逆らわないもん。昨日みたいに強引に肩を掴んで────」


「よぉしじゃあなでなでしてもらおっかなぁ! 彼女さんからいっぱい頭なでなでされたいなァ!!」


「……もぉ」


 なんだその不満そうな顔は。ぷくりと頬を膨らませるんじゃない。これは俺へのご褒美なんだから選択権は俺にあるはずだろう。


 そりゃあハグもキスもシたいに決まってるだろう。今が二人きりなら迷わずにそっちを選択して甘々漬けにしてもらってるところだ。

 

 が、ここは今野外であるということを忘れてはいけない。こんなところでみんなに見られながらなんてどんな羞恥プレイだよ。


「わ、私も。寛司? えっと、ね? ご褒美のことなんだけど……」


「お前らいい加減にしろ」


「────ひゃっ!?」


 中田さんの甲高い悲鳴が響く。


 なんだと思い振り向くと、どこから取り出したのか、中々に大きなサイズの水鉄砲を構えた在原さんがスナイパーの顔をしていた。どうやらあれで中田さんの背中を撃ち抜いたようだ。


「薫……アンタねぇ!」


「はっ! メス顔して無防備な背中晒してるからだ! うらぁ! そっちもぉ!!」


「わわぷっ!?」


 中田さんに檄を飛ばすとすかさず由那の顔にも発砲。こっちは情けない声をあげながらそれを喰らうとゴシゴシと顔を拭いてから応戦の構えをとった。


「むむぅ……やったね薫ちゃん。そっちがその気なら全面戦争だよ!!」


「はっはぁ! かかってこいや甘ちゃんどもが! 私とひなちゃんのエイム力見せたらぁ!!」


 どうやら在原さんは鼻からその気だったらしい。唸りながら寝転がっている先生の横に置いてあった荷物からは人数分の水鉄砲が姿を覗かせていた。


 向こうがやる気なら俺たちも戦わないわけにはいかないだろう。それに俺だって男だ。水鉄砲なんて見せられたら使わないなんて選択肢はとれない。


「やろう、ゆーし! いつもいつも薫ちゃんにはしてやられてばかりだからね……。ぎゃふんと言わせるよ!」


「おう。たまには反撃してやらんとな」



 今ここに水鉄砲合戦のゴングが鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ