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320話 愛情の証

320話 愛情の証



 朝がやってきた。


 俺を包むぬくぬくのお布団から少しだけ顔を出して薄ら目を開けると、窓から強い日差しが覗いている。


「んぅ……そう、か。結局寝落ちして……」


 枕元に捨てられるようにして落ちていたスマホで時間を確認すると、今は朝の七時。確か朝ごはんが八時でそれまでには起きてこいと言われてたっけ。まだ時間の余裕はありそうだな。


「ぴぃ……すぴぃ……」


「うおっ。なんか暑いと思ったら由那か……」


 確か昨日の夜は歯を磨いた後布団に戻って、一緒にごろごろしながらハグしたりキスしたり。休憩がてら動画を見たりもしながらのんびりして、その後の記憶が曖昧だということは多分寝落ちしたな。

 

 部屋の電気は消えている。なんとか力を振り絞って消灯だけはしたのだろうか。にしても……まさか本当に寝落ちするまでイチャイチャ三昧を繰り広げてしまうとは。


 べっとりと抱きついて俺の胸元でよく眠っている彼女さんはなんともまあ幸せそうな顔で。どうやらしっかりと満足してから眠ってくれたようで何よりだ。もしかしたらもう一つ大人の階段を登ろうなんて考えてるんじゃないか……とも思っていたけれど。どうやら大人のキスまでで手一杯だったみたいだな。結局布団の中でも何度もした気がするし。


「んにゃ……あ?」


「おっ。起きたか」


「にゅぐぅ。おはよぉ……」


 ぽわぽわしてるなぁ。身体は起きたけど意識はまだ半分夢の中なのだろうか。いつも起きる時間こそ早いけれど、何気に寝起きはふにゃふにゃで弱いよな。まあそんなところも可愛いが。


「寝落ちしちゃったんだぁ。時間、だいじょうぶそ……?」


「今は朝の七時だな。ごはんまであと一時間あるぞ」


「えへへぇ……やったぁ。じゃああと一時間、お布団の中にいようね」


 いや、準備とかしなくていいのか? ごはんを食べたらその後はすぐに出かける予定だったと思うけど。


 まあでも……うん。なんとかなるか。絶対俺らよりも先生とかの方が準備遅いだろうし。みんなを待たせるようなことにはならないだろう。


「いるのはいいけど二度寝はするなよ? もう一回寝ちゃったら起きられる自信ないだろ」


「はぁ〜い。じゃあ彼氏さんの匂いと感触を堪能しながらのごろごろだけにすりゅぅ」


 すりすり、ごろごろごろ。すんすんっ。


 湯たんぽのようにぽかぽかな由那さんの甘えんぼ攻撃。俺は会心の一撃を喰らったがカウンターでなでなでを返す。ついでに背中に手を回してからそっと抱きしめ、大好きな彼女さんの存在を噛み締めた。


 すると、しばらくなでられを堪能してから。むくりと顔を上げて俺の首筋を見ては、甘い笑みを溢す。


「跡……くっきり残ってるね♡」


「へ……?」


「ゆーしさんはぁ、私の彼氏さんなのです。つまりゆーしさんは私のものであり、他の人に手出しされたらダメなのですぅ。だからちゃんと……ね? その証を刻んじゃった♡」


 ま、まさかコイツ、やりやがったか?


「キ•ス•マ•ー•ク♡ 首に残っちゃってるよ。えへへ、頑張って付けたから虫刺されなんて言い訳できないね♡」


「おまっ!? ど、どうすんだよ!? 首筋になんて付けたら絶対周りから見えるだろ!」


「見えるように付けたんだも〜ん。それに、付いてるのはゆーしだけじゃないよ? ほらっ」


「おぅっふ……」


 寝落ち寸前で寝ぼけた俺、一体どこまで暴走してたんだ?


 チラッ、と真っ白な髪の毛を退けて見せた首筋には、俺についているのと同じような位置に同じような跡が。間違いない。俺が付けたのだ。


「これ、絶対揶揄われるぞ。しかも同じ位置て」


「ふふっ。お互いにマーキングしちゃったね。なんならもっと増やしちゃう?」


「だ、ダメに決まってるだろ! 俺たちが今からどんな格好になるのか分かってるのか?」


「分かりましぇ〜んっ。というわけで腕にもう一箇所……ちゅうっ♡」


「やめ────あぁっ!?」


 気づいた時にはもう遅い。完全に腕をホールドされていた俺に抗う術はなく、右腕に吸いつかれて。


(どうすんだよ、マジで……)




 ああ、終わった。

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