316話 本能と理性3
316話 本能と理性3
「私のおっぱい……カップ数、一つ上がったよ。え•ふ•か•っ•ぷ♡」
「〜〜〜〜っ!?!?」
一体何を伝えてくるのかと思えば。
あまりに衝撃的な告白をされ、全身に鳥肌が立つとともにすかさず距離を取ってしまう。
えふかっぷ……エフ、カップ? えっと、えーびーしーでぃーいー……えふ?
由那が世間一般的に見ても大きい方だということは分かっていた。けど、こうやって具体的なカップ数を聞いたのは初めてのこと。
そうか、俺の彼女さんはエフなのか。エフってあのエフだよな。うん、大きいとは思っていたけれどまさかそこまでとは……。
大体まだ成長中ってどういうことだよ。ただでさえ今の時点で充分すぎるほどに実っているだろうが。なんだ? 俺のことをこれ以上誘惑してどうするつもりなんだこの野郎。
「えへへ〜。私のおっぱいがおっきくなっちゃうの、やっぱりゆーしのせいだよ。ゆーしと一緒にいるといつもドキドキさせられて……好き好き、って。さっきだって私の中の女の子なホルモンさんがいっぱい増えちゃったもん」
「っ、ぐ……」
「触らなくても女の子のをおっきくしちゃうなんて。最高の彼氏さんだね。かっこいいよ。世界で一番、大好きっ♡」
理性……理性ぇ……。
なんだか分からないが身体が小刻みに震える。由那に耳元で誘惑するような持ち上げの言葉と愛を何度も囁かれ、ぶち、ぶちっ、と。頭の中で何かが切れるような。そんな音が鳴る。
まずい。本能的に分かる。きっとこの音がもっともっと大きくなり、俺の中にある一本の糸が切れた時。その時こそが俺の理性崩壊の瞬間。そうなったら確実に由那に覆い被さってしまうことだろう。
狼さんを引っ張り出す。どうやらその言葉に嘘偽りはなかったようだ。
俺は今確実に、過去で一番の理性崩壊の危機に直面している。
「ね〜ぇ。キス、しよ? 我慢できなくなってきちゃった。熱々の露天風呂に浸かってぽかぽかに温まった身体で激しく求め合うようなキス、したくない?」
「……い、今は待ってくれ。その、マジで色々限界だから。変なことしそうで……怖い」
「しちゃってもいいよ? 私のぜんぶはゆーしのものだもん。ゆーしがしたいこと、全部していいんだよ?」
ああもう、クソ……。俺の理性がもう限界に近いことを考えればこれ以上の刺激は避けるべきなのに。
キスしたい。ぷるぷるで瑞々しいこの唇を奪いたい。激しく求め合ってハグもしながら、この可愛すぎる彼女さんを貪り尽くしてしまいたい。
一度芽吹いた種の成長は留まるところを知らず、好きという気持ちをどんどん肥大化させていった。
ブチ……ブチブチッ。理性の糸がほつれては細くなり、千切れる。何本もの繊維を紡ぎ完成されていたそれはあっという間に細々としたみすぼらしい姿に変わっていくと、やがてたった一本の細い糸屑になってしまって。
「いっぱいイチャイチャ……シよ?」
ぷつんっ。由那のその言葉を最後に、糸が完全に切れたかのような。そんな音が響き渡って。
「由那……ッッ!!」
気づけば俺は、由那の身体を目一杯引き寄せて。乱暴にキスを始めてしまったのだった。




