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36話 抱いた気持ち

36話 抱いた気持ち



「すぅ……」


「寝た、か」


 お腹いっぱいで眠たかったのだろうか。由那はしばらく俺の胸の中で頬擦りをしたり甘えたりを繰り返した後、急に静かになって眠ってしまった。


 ゆっくりした呼吸で小さく動く背中をそっと撫でながら、一人ハンモックの網を眺めて、考える。


『これからも……いっぱい、甘えてもいい? ゆーしにぴっとりな私でも……いい?』


 その言葉に、死ぬほどドキッとした。


 嫌じゃないから好きしてくれ。そう答えたのは本心だ。


(くっそ。なんでコイツ、こんなに可愛いんだよ。お前みたいな美少女に詰め寄られて……嫌なわけ、ないだろ……)


 いくじなしだと。由那にはそう言われた。


 でも仕方ないだろ。俺はこんなに可愛い女の子と一緒にいたことなんて、一度もないんだ。だから積極的にしたいという気持ちよりも、どうしても緊張や恥ずかしさが勝ってしまう。俺なんかでいいのかと、不安になってしまう。


 ただ、さっき初めて自分から由那に触れて。自分のしたいように、頭を撫で回してから耳たぶを触り、思いっきり抱きしめて。


 離れたくない。コイツと、ずっと一緒にいたい。そんな事を考えてしまったのである。


(ああ、心臓うるせぇ!! くそ、なんだよこれ!! 俺は、由那のことを……っ!?)


 それは、未だ生きてきた人生の中で感じたことのない感情。腕の中にいる女の子のことを離したくない。可愛い。一緒にいたい。色んな気持ちがごちゃ混ぜになっているけれど、確かに芽生えている由那への想い。


 再会してたったの十数日。それだけの期間で、俺の頭の中は由那に侵食され始めて、今ではほとんど埋め尽くされている。


(もっと、由那のことが知りたい。俺の抱いている気持ちに確証を得るためにも……由那が、俺のことをどう思ってくれているのかを知るためにも)


 俺達は幼なじみだ。幼稚園に入る前からずっと一緒にいて、常に隣に立っているのが当たり前の関係だった。だから別に、思いっきり抱きついてきたり甘えてきたり、キスをできなかったことを残念そうにしていたり。そんな仕草があっても当然────


 そんなわけ、ない。考えないようにして気持ちに蓋をしていたのは、きっと俺自身がどうしたらいいのか分からなかったからだ。


 だけど、これからは考えていかなければならない。


 由那が″俺を好きである″という、その可能性を。考えた上で、俺がどうしたいのか。彼女とどうなりたいのか。ちゃんと、決めなきゃいけない。


「ふにゃ、ぁ。ゆーしぃ……」


「……ったく。幸せそうな顔して寝やがって」


 こっちはお前のことで頭がいっぱいだというのに。


 いや……もしかしたら由那も、こんな気持ちだったのかもな。


 まあでも、ひとまず頭の中でこんがらがってたものは少し解けた気がする。これからどう由那と向き合っていくのか。俺はどういった行動をとっていくのか。今までのようにただ恥ずかしい、緊張するからなんて免罪符で由那を不安にさせるようなことはもうしたくない。


 当然、人目があるところで行き過ぎた行動を止めるくらいはするけれど。出来る限り、俺も俺自身の欲望に逆らいすぎないようにしよう。


「由那……これからも、よろしくな」




 可愛く寝息を立てて眠っている彼女の頭をそっと撫でて、目を閉じながら。言った。

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