312話 イチャイチャミッドナイト
312話 イチャイチャミッドナイト
食べ始める前はこんな量食べ切れるのか、なんて思っていたのに。
いざ食事を終えるとあっという間だった。俺たちも寛司たちも、そして在原さんたちも。各々が各々の相手とイチャつきながら食べる旅館の料理は本当に美味しかった。おかげさまでお腹はもうパンパンだ。
「食っべたぁ〜! もうお腹いっぱいだよぉ〜!」
「だなぁ。こりゃ幸福感で今日はすぐに寝ちゃいそうだ」
「むっ。ダメだからね? この後はお部屋に帰っていっぱいイチャイチャ、でしょ!」
「はぁい……」
くあぁ、と不意に出たあくびに口元を押さえながら。腕を組んだ状態でぷくりと頬を膨らませる彼女さんのお叱りを受ける。
今日は本当、どれだけやることが多いんだ。幸せのオンパレードだな全く。
「んじゃま、バカップルは部屋でよろしくしたいだろうし。一旦は解散だな。奈美ねえは見ての通りもうダウンしてるし、私とひなちゃんも部屋に戻る。お前ら、言っとくけど明日寝坊すんなよ! 朝早いんだから夜更かししすぎないように!!」
「はぁ〜い♡」
「まあ、うん。由那が寝かしてくれたら」
「「……」」
おい待てそこのバカップル。なぜ黙る? なぜ返事をしない? あ、そっぽ向きやがった!
不審な反応を見せる二人に言及することはなく、在原さんはズルズルと再び酔い潰れた先生を引っ張り部屋の中へと連れていく。ちなみに蘭原さんも少し眠気があるらしく、どこかウトウトとした様子だった。
あ、ちなみにだが、帰りは先生の運転に頼るわけではない。本当は先生が呑むことなく帰りも運転手をしてくれたら金銭的にも一番楽だったんだが。まあそれならあの人は引き受けないだろうしな。なんでもあの車の持ち主の緑おばさん? という人が先生を引き取りあの車を運転して連れて帰るんだそうな。その関係で俺たちは帰りだけ電車だ。
元々は行き帰りどちらも先生の運転予定だったらしいが、あまりに摂取アルコール量が多すぎることから急遽予定変更となったらしい。移動費は多少嵩んでしまうけどこればっかりは仕方ないな。命には変えられない。
「じゃ、また明日ね勇士。江口さんも、ちょっとくらいは寝かせてあげなよ?」
「ふっふっふ〜。渡辺君も、ね? あんまり有美ちゃんとイチャイチャちゅっちゅしすぎちゃダメだよっ♡」
「イ、イチャ……変な言い方しないでよ。もお……」
満更でもないみたいだな。なんて分かりやすいんだ。
さて。五人とも各々の部屋に消えていってしまった。あと廊下に取り残されたのはもう俺たちだけだ。
「さ、私たちも行こっか。イチャイチャミッドナイトの開演だよ!」
「み、ミッドナイト……」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
一体何を企んでいるのか。この部屋に着替えを取りに来たときも何やら意味深な態度をとっていたし。少なくともこの一夜がただ静かに終わっていくとは思えない。
気を引き締めないとな。由那の猛攻に晒されては簡単に理性が崩壊しかねない。
「今日はゆーしの中の狼さんを引っ張り出しますので。そのつもりで♡」
「っ……!」
ああ、ダメだ。
もう既に自信が無い。




