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309話 食べさせあいっこ1

309話 食べさせあいっこ1



 さて、仕切り直しまして。


 在原さんの隣に先生を置き、やっと全員が揃ったところでようやく料理が運ばれてくる。


「わぁ〜! 見て見て、凄いよゆーし! お魚さんだ〜!!」


「しゃぶしゃぶもあるな。え、これで一人分ってマジか」


「すんませ〜ん! 熱燗一つ〜!!」


 目の前に置かれたのはお刺身の盛られたお皿や、しゃぶしゃぶのようにしてお肉が入れられている小さなお鍋。下から火で熱し、ゆっくりと赤身が灰色になっていくその様子はどこか高級感がある。


 他にも白ごはんやお味噌汁等々。中々食べ応えがありそうだ。


「オイ奈美ねえ! いきなりお酒頼むんじゃねえよ! というか今日は散々呑んでたんじゃねえのか!?」


「ふぇっふぇ。まず寝起きには一杯だろ? それにこんな魅力的な肴がいくつもあるんだ。呑まない方が失礼ってやつだろうよ!!」


「クソッ、流石に可哀想かと思って連れてきたのに。間違いだったか……」


 この人どんだけ呑むんだほんと。俺はまだ高校生だし飲酒経験は当然無いわけだけど、そんなにいいものなのだろうか。少なくともあの飲み方は絶対に身体には良くない気がするから真似しようとは思わないけども。


 ただ、お酒を飲めるというのは少し楽しそうだとは思う。二十歳になった暁には由那とオシャレに家でお酒を呑んでみたりしてみたいな。まあ由那は絶対お酒弱いだろうし、俺も血筋的にあまり強い自信はないから二人してすぐ顔真っ赤になりそうだけど。それもそれで二人なら楽しそうだ。


「はいはい、まあそういうのは気にしたら負けだぞ〜。せっかくのご馳走なんだ。早く食わなきゃ損だ」


「奈美ねえがそれを言うか……。はあ、もういいや」


 諦めた、といった様子で、在原さんは両手を合わせる。


 そのタイミングに合わせ俺たち五人も同じ行動を取ると、示し合わせたかのように。全員で口を開いた。


「「「「「「いただきます」」」」」」

「いただきうぃ〜」


 なんか一人変なことを言っていた気がするが気のせいだ。ただの空耳だ。


「なんか水族館に行った後にお刺身ってちょっと罪悪感あるよねぇ。じゅるるっ」


「罪悪感のある奴がしていい顔じゃないな。えっと……これがマグロで、こっちが鯛? あとはブリ……なのか? 全然知識が無いから薄らの見た目でしか判断できないな」


 赤くぶりっとしているのがマグロ。白く薄いのが鯛。黒みを孕んだ少しダークな色をしているのがぶり。俺が刺身についてある知識はせいぜいこれくらいだ。まあ多分ここに盛られているのはさっき挙げた三種類で合っているとは思うが、間違っていたらちょっと恥ずかしいな。


「全部美味しいから何でもいいよぉ〜。はいゆーし、マグロちゃんあ〜ん♡」


「ん……むぐっ」


 ちょんちょん、とお醤油を軽く付けたマグロを橋で掴み顔の前に運んできたので、口に含みゆっくりと咀嚼する。


(っ!? 柔らか……甘っ!?)


 瞬間、口の中に広がるのはとろりと柔らかい食感。そして、もはや甘いとすら表せてしまうほどに優しい味とほんの少しの醤油の風味。


 美味い。前食べた海鮮丼のマグロはなんというかこう、食べ応えや肉付きに振っている感じがあった。もちろんあれはあれで最高に美味かったし、ぷりっぷりな身はやみつきになるほどだった。


 が、これは同じマグロでも全く別のもの。こちらは相反するように柔らかさにステータスを振っており、あっという間に溶けて無くなっていく様は高級食材を彷彿とさせた。


「んぅま! めっちゃ美味いぞこれ!」


「ほんと!? ねえねえ、じゃあ私も! あ〜ん!」


「ほれっ」


「んんんんん〜っ♡ 舌の上で蕩けるぅ!」


「ふふっ、あの二人何やってるんだか。ほんと、どこにいてもイチャイチャばっかりだなぁ」


「だね。俺たちも負けてられないや」


「へっ!?」


 オイ聞こえてるぞバカップル。人をどこでもイチャついてばかりの奴らみたいに言いやがって。




 そっちだってスイッチが入ったら一瞬だろうに。ほら、始まった。

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