306話 根掘り葉掘り3
306話 根掘り葉掘り3
ようやく事実を事実と認めたのか、私から離れると。ちょこんと元いた場所へと戻ってお尻をつける有美ちゃん。
もう言い訳のしようがない。今更その寝言を私たちの想像しているものとは全く別物だと挽回しようにも、動揺しすぎた。「それならなんであんなに慌ててたんだ?」と薫ちゃんに返されて言葉を詰まらせる未来が容易に想像できてしまう。
「朝まで何してたのか。正直に言おうな?」
「な、なんで言わなきゃいけない……の。揶揄われるって分かってるもん。言うの、やだ……」
「か、揶揄ったりなんてしないよ! 私はただ、純粋に有美ちゃんの話を聞きたいだけだよ?」
「う゛っ……」
有美ちゃん、もうその表情はほとんど自白したようなものなんだけどね。ほらほら、諦めて早く吐いちゃいなさい。
「……っちした、けど」
「なぁ〜んだぁ〜? 声ちっさ過ぎて聞こえねぇなぁ〜! ほら、もっと大きな声で! 腹から声を出して!!」
「ちょ、薫さん……さ、流石に可哀想、ですよ。大声で宣言させるのはやめましょう?」
ぼそぼそと私たちに聞こえるか聞こえないかくらいの声で何かを呟く有美ちゃんは、もう色々と限界そうだ。羞恥心が溜まりすぎて顔が赤くなるだけじゃなくぷるぷると小刻みに震えている。
でも、ここまで追い詰められてはもう言い返す気力も残っていないらしく。もう一度、少しだけ声の大きさを上げて。言った。
「え、えっちなこと……した。これで、いい……?」
「「「わぉ……」」」
「な、なにその反応!? 言わせておいてぇっ!!」
今、胸がキュンとした。私が男の子だったら多分好きになっちゃってたと思う。
そっか。やっぱり有美ちゃんは渡辺君と″そういうこと″してたんだ。二人が付き合い始めたのって確か受験が終わってからだから今月で半年くらい?
好きを深め合った相手と初めてを交換し合うというのはどんな気持ちなのだろう。もし私がゆーしとシたら……って。どうしよう、好奇心が湧き上がって止まらない。
きっと気持ちよかったんだろうなぁ。寝言で呟いてた時「また朝まで」って言ってたし、多分もう日常の一部分になりつつあるのだろう。
知りたい。どうやってする流れになったのか。実際にシてみてどうだったのか。シたあとどうなるか……は、今の有美ちゃんを見れば分かるか。
「も、もうこの話終わり! これ以上は絶対に答えないから!!」
「えぇ〜っ!? 有美ちゃんの体験談聞かせてよぉ!!」
「由那ちゃんはもう充分神沢君と好き同士なんだからいつでもできるでしょ!?」
「わ、私とゆーしは大人のキスもまだだもん! ぶぅ、せっかく参考にさせてもらおうと思ったのになぁ……」
「や、やめて。キラキラした目で見ないで。罪悪感が凄い……」
「ふふっ、なら私の曇りなき眼で見つめてやるぜ。いいんだぞ? もっともっと吐き出してくれて。罪悪感を溜め込む必要なんてないのだぁ」
「……なんでだろ。今罪悪感が全部無くなった。薫、目が濁りすぎてるかな」
「何をぅ!?」
それにしても……そっか。有美ちゃん、えっちしたんだ。
(私も、負けてられないな……)
ぽかぽかと身体が温まっていく感覚と共に。この旅行で成し遂げようとしていたことに対する決意をより固くする。
「ああもう、熱っつい! 私身体洗ってくる!!」
「はっ、アイツ逃げやがったな。ほれひなちゃん、ちこうよれ。私たちもあのバカップルに負けないようイチャイチャすっぞ!」
「ひゃ、ひゃい! イチャ、イチャ……イチャイチャ、しましゅっ!」
待っててね、ゆーし。




