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305話 根掘り葉掘り2

305話 根掘り葉掘り2



「ど、どこまでって……」


「勿体ぶるんじゃねえよぉ。最近のお前、明らかに変だからな。渡辺君無しじゃ生きていけない身体になってるだろ」


「な、ななにゃ!? 私は別に、そんなッ!!」


 かあぁっ。もはやお湯の熱さのせいという言い訳は効かないほどに。瞬時に有美ちゃんの顔が蛸のように赤みを増していく。


 そう。有美ちゃんが変になったのは夏休みに入ってから。この数週間の間で絶対に渡辺君との間に″なにか″が起こった。


 前は人目を気にしていたのに手繋ぎや腕組みを人前でもするようになり、渡辺君を見る時はいつもとろんとした目で見惚れている。


 明らかに好きなレベルが上がっているのだ。元々カンストレベルに渡辺君のことを好きだった有美ちゃんが、更にそこから愛情を膨らませた。言うなれば限界突破だ。


 そしておそらく、薫ちゃんはその原因に大方察しがついている。いや、薫ちゃんだけじゃない。ひなちゃんも、そして私も。


 それほどに分かりやすいのだ。旅行が始まってからの有美ちゃんは。


「き、キスはした……よ」


「そんなの知ってる。何年一緒にいると思ってんだ」


「そ、それ以上は何もしてないって!」


「ダウト。悪いがこっちにはハッキリとした根拠もあるんだからな」


 ダメだ。口の勝負で有美ちゃんが薫ちゃんに勝てるわけがない。なんとか否定しつつも、理詰めでどんどん追い詰められていく。


「お前、深夜パーキングエリアに着くまでの車内でさ。『激しいよぉ。また朝までするのぉ〜?』って。寝言で漏らしてたぞ」


「へぇっ!? う、嘘っ!?!?」


 うん。言ってた。「朝まで」というのが何を意味するのかあの時はあまり考えなかったけど、今思えばあれは完全に″そういうこと″をしている夢を見ていた有美ちゃんの寝言に相違ない。ひなちゃんが顔を真っ赤にして聞いていたのはそれを聞いた瞬間即座に勘付いたからだろう。


 きょろきょろ、あたふたあたふた。わたわたっ。

 

 もう、分かりやすすぎるよ有美ちゃん。その反応は誰が見ても図星なんだと分かってしまう。不意の攻撃に動揺しちゃったのかもしれないけど、本当に誤魔化し切る気があるのかと疑っちゃうレベルだ。


「嘘……だよね? そ、そうだ。これきっとあれだ。はは〜ん。もう、驚かせないでよ。薫、嘘つくならもうちょっとマシなのにしてよね。そんなので私を追い詰めようったってそうはいかないから!」


 そう言ってひなちゃんに視線をロックオンすると、ガシッと両肩を掴む。そして言葉を続けた。


「さっきの、嘘だよね? ひなちゃんはそんなの、聞いてないよね?」


「……」


「言ったれひなちゃん。嘘は良くないぞぉ」


 どうするのが正解なのだろう、といった表情でこちらに救いを求める視線を送ってきたひなちゃんに、私は無言の頷きを返す。


 正直に言おう、と。


「言って……ました。渡辺君の腕に抱きつきながら、幸せそうに……」


「〜〜〜〜っ!!」


 ああ、もう無理だよ有美ちゃん。その先は泥沼だから。


 次のターゲットは私。ひなちゃんならもしかしたら薫さんの味方をして嘘をついているかもしれないと。そんなわずかな可能性に賭け、こちらにも飛びついてくる。


 が。


「ほんとだよ、有美ちゃん。さっき薫ちゃんが言ってたこと、一言一句間違わずに言ってた」


「んなぁぁぁぁっ!!!」




 万事休す。有美ちゃんにはもう逃げ道は無くなっていた。

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