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300話記念話16 メスガキ由那ちゃん3

300話記念話16 メスガキ由那ちゃん3



「……それで? 俺を元気付けるためにメスガキの所作を学んだ、と」


「ごめんなしゃい……」


 数学の次に四限の古典を終えて、いつもの如く空き教室に移動したはいいものの。私はちょんと椅子の上(床は汚いのでそこでいいと言われた。優しい。好き)に正座させられ、ゆーしに詰問をされていた。


 どうやってさっきの言葉遣いを学んだのか。そもそもどうして身につけたのか。それらを洗いざらい話させられ、私の脚はもうピリピリと痺れ始めている。ただでさえ脚力が無いものだからとにかく正座が辛い。


「だってだって! ゆーしが落ち込んでる時、いっぱい励ませるようにって……!!」


「いやまあ、うん。その気持ちは嬉しいんだけどな? びっくりするくらい空回りしてるぞ。なんでよりによってそんなジャンル勉強するかね」


 そんなこと言われたって。あのヒロインの子は可愛かったし、参考になると思ったんだもん。


 というかどうしよう。脚のピリピリがどんどん増してきてる。このままだと攣っちゃうかもしれない。脚を攣った時の痛さって泣いちゃいそうになるくらい凄いから、その前に解放して欲しいなぁ。


「とにかくもうさっきのは禁止な。大体なぁ、あんなのしなくたって……」


「へ?」


 しなくたって、なに?


「俺はその……あれだ。隣に由那がいてくれるだけで癒されるし」


「〜〜〜〜っ!!」


 ぽふっ。嬉しさのあまり顔に熱が篭り、頭から湯気が湧き出る。


 そっか。私がそばにいるだけで。えへ、えへへ……


 そういうことなら仕方ないなぁ。他ならぬ彼氏さんがこれまで通りでいいって言うんだったらメスガキ由那ちゃんは封印だね。


「ね、ゆーし」


「な、なんだよ」


「私のことだ〜い好きな彼氏さんのために、これからもずっと私がそばにいるね? 落ち込んだ時にも隣で支えててあげる。日頃のお返しに頭なでなでもいっぱいしてあげるから!」


 どうやら嬉しいことに、今のゆーしの私への好きはもうカンストしてしまっているらしい。


 だから変に変わる必要なんてない。もちろんこれまで通り好きになってもらい続ける努力はするけど。私の彼氏さん、私のこと好きすぎるからにゃあ。


「ふふっ、なんだか彼氏さんに甘やかしてもらいたくなってきたぁ。もう正座解いていいよねっ。ぎゅ〜♡」


「あ、ちょっ……。ったく」


 ああ、やっぱりこの感じ。いい。


 ゆーしの腕に飛びついて思いっきり抱擁すると、一瞬驚いたようにしながらも。すぐに頭をよしよしして甘やかしてくれた。


「ほんと、隣にいるだけで俺のことを癒してくれるな。最高の彼女さんだわ」


「にゃ〜♡」


 すりすりっ。ぐりぐりぐりっ。


 頬擦りももっと撫でての頭ぐりぐりも。するたびにゆーしは嬉しそうに微笑み、私を甘やかすためのスパイスとして働いていく。


(やっぱり、かっこいいなぁ……)


 珍しく狼狽えてたじたじになっているところも良かったけれど。やっぱりこうやって私を甘やかす時に見せてくれる優しい笑顔は格別だ。ただでさえかっこいい彼氏さんが更に、もはやかっこいいという言葉で表すことすらできないほどのかっこよさを身に纏っている。


「私が落ち込んだ時もこうやっていっぱいなでなでしてね。世界一かっこいい私だけの彼氏さん♡」


「……もちろん」


 ぎゅっ、と空いている左手を握って体温を確かめながら。




 幸せを噛み締めた。

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