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300話記念話15 メスガキ由那ちゃん2

300話記念話15 メスガキ由那ちゃん2



「むぅ……」


「見て見てゆーし! 久しぶりに小テストで満点……って、あれ?」


 翌日。この間やった数学の小テストが返ってきたんだけど、どこかゆーしの顔が暗い。


 チラりと点数を覗いてみると、半分は超えていたものの正答率は全体の六割程度。ゆーしは理系教科が大の苦手だから「苦手教科でそれだけ取れたら充分」とも思う。


 しかし直前に先生が放った言葉が悪かった。


『今回はみんなよくできてたぞ! 平均はちゃんと出してないけど八割は間違いなく超えてたからなー! 点数悪かった奴は反省するように!!』


 そう、今回は平均点が高かったのだ。


 定期テストでもないからそこまで成績にダメージは無いものの。あんなことを言われた直後にこの点数だと落ち込んでしまうのも分かる。


「お、由那は満点か。凄いな、偉いぞ」


「な、なんかごめんね……」


「何言ってんだ。由那は頑張ってちゃんと点数取れたんだから素直に褒められとけって」


 この頭なでなではきっと、変に気を使わないでほしいというメッセージだ。


 ゆーしのことだ。きっと一回失敗したくらいではめげない。大きな失敗というわけでもないし、きっとすぐ元に戻ることだろう。


 けど……やっぱり彼女さんである私としては、そのお手伝いをしてあげたい。


(はっ! これってもしかして昨日学んだことを実践するチャンスじゃ!?)


 そこで真っ先に浮かんだのは、昨日結局ジャンルそのものにどハマりして読み漁ってしまった「メスガキ」と呼ばれる女の子の言い回し。


 ふっふっふ、まさかこんなに早く出番が来るなんて。よくよく考えたらゆーしが落ち込んでるところなんてそうそう出くわさないんじゃ? なんて思っていたけど、勉強しておいてよかった。


(たしか最初は……)


 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教室がザワザワと騒がしくなっていく。


 そんな中で私はゆーしの耳にそっと口を近づけて。囁くように言った。


「えっへへ、ゆーしぃ。こんな簡単な問題も解けないんだぁ。ざぁ〜こっ♡」


「!!?」


 ふふっ、動揺してる。私の声を聞いた瞬間、ビクンッて。身体が大きく跳ねた。


 あの漫画で男の子側がしてた反応と同じだ。これはもしや思ってる以上に効果があるのかも。


 ゆーしを元気づける。ドキドキしてもらい、今よりももっともっと好きになってもらう。


 そのために、もっと……


「数学よわよわ〜♡ 文系教科以外私に負けちゃうよわよわゆーしさぁ〜ん♡ ほら、見て見て〜? 私はひゃっくて〜ん♡ でもゆーしさんは六十点〜♡」


「ぬぐ、ぬぐぐ……」


「あれ? 顔まっかっか〜♡ や〜いや〜い♡ 男の子のくせにこんなか弱い女の子に言い負かされちゃうんだぁ〜♡」


 どうしよう、ちょっと楽しくなってきた。


 私に揶揄われてなす術なく身体をプルプルさせてるゆーし……可愛いっ♡


 どうしよっかなぁ。もっともっといじめちゃおっかなぁ〜。


「……」


「あれ? 何かなぁその手。きつねさん? こんこ〜────いったぁ!?」


 びしぃっ! 


 ぐぐぐ、と親指で溜めを作り力が込められた中指が私の額に炸裂する。


「?? !!?」


「おんまぇ……そんな言い回しどこで覚えた。調子乗りやがって!」


「いだっ! いだだだだ!!! ちょ、やめっ!? 頭ぐりぐりやめてぇ!! バカになっちゃうよぉ!!!」


「たった一回小テストで勝ったくらいで……許さん!」


「ん゛にゃぁぁぁ!?!?」


 ぐりぐりぐりぐり。


 ゆーしの男の子な拳に頭を挟まれ、私は痛みのあまりその場で悶える。




 おかしい……おかしいっ!! 私が読んだ漫画だったら揶揄われた男の子はみんなされるがままだったのに!

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