300話記念話14 メスガキ由那ちゃん1
300話記念話14 メスガキ由那ちゃん1
『やぁ〜い♡ 先輩のざぁこざぁこ♡ 男の子なのにこんなのもできないの〜?♡』
それは、アプリで漫画を読んでいた時のこと。
私は基本的に恋愛やラブコメの、その中でも特にハッピーエンドで終わる作品が大好きだ。だから必然的に両想いや両片想い、そもそも初めから付き合っているカップルみたいな、拗れたりしない要素の含まれているものを読むことが多い。
そして今日も。アプリで始まった新連載の一話に目を通していた。
「メスガキ後輩は今日も素直になれない」という題名のそれの内容は、ざっくり説明するとヒロインの子が先輩に恋をしているのだけれど、何故か素直になれなくて。ついその人の前でだけ「メスガキ」と呼ばれる態度になってしまうというものだ。
片想いのタグが入っていたからとりあえずで読んでみたのだけれど、なんというか……初めて見る作風だ。
台詞だけ見ればそこから好きは感じ取れないのに、読者である私はこの子の裏側を知っているということと、それを言っている間も内面では自責の念に駆られているところにキュンとしてしまう。
「好きな裏返し、なのかなぁ。それに先輩さんもあんまり嫌そうにしてないし……はっ! もしかしてそういうこと!?」
ピコーン、と頭の中で閃きの音が響く。
もしかして男の子って、女の子に揶揄われるのが好きなんじゃないだろうか。
漫画に対する感想を書く「応援コメント」の欄にも、男の子の読者であろう人達から「メスガキは推せる」とか、「こんな風に揶揄ってくれる後輩が欲しかった」とか。ヒロインの子が可愛いと称賛する声はとにかく多い。「分からせたい」という言葉の意味はよく分からないけれど、まあとにかく。こういう子が男の子に人気があるということはひしひしと伝わってきた。
「つまり……私もゆーしを揶揄えば、もっともっと好きになってもらえる!?」
私はゆーしが何かミスをした時やできなかった時、よしよしと頭なでなでをしてあげたりハグをしてあげて、とにかくいっぱい甘やかすことが多い。当然私は甘やかされる方が好きだけど、たまに弱っているゆーしを甘やかしている時はなんというかこう……母性? のようなものが刺激されて。
けど実はこうやって揶揄ってあげるのも一つの手なのではないだろうか。実際この子に揶揄われた先輩さんはウザそうにしながらも奮起し、すぐに元気になって困難に立ち向かっている。
これは言わば一種の「鼓舞」。女の子の揶揄いは男の子に元気を、立ち上がる勇気をも与える。
「よぉし、決めた! 私もこの子の真似してみよっと!」
次からは私も、ゆーしが悩んだり落ち込んでいる時はいっぱい揶揄ってあげなきゃ。「ざ〜こっ♡」て耳元で囁いてあげよう。きっとその方が元気いっぱいになってくれる……よね?
むんっ、とその決意を握り拳に込めて。私は早速「メスガキ」というものを勉強するため、他の作品も読み進めていく。
全てはゆーしをもっともっと元気づけてあげるため。私はメスガキ由那ちゃんになるっ!!




