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300話記念話10 猫カフェ4

300話記念話10 猫カフェ4



 予想外の言葉につい、固まってしまった。


 寛司が猫派なのは知っていたけど、まさかその理由が……。


「ツンツンしてるように見えても根っこの部分は誰よりも甘えんぼでさ。一度そのスイッチが入るととことん甘えに来てくれる。この子に限っては綺麗な黒い毛を持っている部分も一緒だし。ね? そっくりでしょ」


「あ、甘えんぼなんかじゃ……ない」


「ふふっ、そうだね。そういうことにしとこっか」


「むぅ……」


 た、確かにたまに猛烈に寛司に甘えたくなる時はあるし、頭を撫でられたりするのは好きだけど。


 ここまでではないはずだ。こんな猫撫で声をあげて、無防備な姿を晒して。由那ちゃんなら神沢君相手にこれくらいのこと平気だってのからかもしれないけれど、私には無理。うん、無理だ。


「な〜お♡ んにゃ、ごろごろごろ……♡」


「よしよしっ。君は素直だね。素直な子にはもっといっぱいなでなでをあげよう」


「なっ!? か、寛司? 他の子も触ったらどう? ほら、一匹だけ猫可愛がりしてないでさ!」


 って、あれ。何してるんだ私。別に寛司がどの猫を可愛がろうが関係ないのに。そもそも猫カフェに連れてきたのは私で、ここは猫を撫でる場所。寛司は然るべき場所でごく当然のことをしているだけだというのに。


 私今、嫉妬して……?


(いや! いやいやいやいや!!)


 ない。絶対にない。相手が女の子ならともかく、猫相手に。いくらなんでも器が小さすぎる。


「や、やっぱり何でもない。ふん……」


「……ぷふっ」


「なぁっ!? 何今の!? 笑った! 今私のこと笑ったでしょ!!」


「いてっ。いや、ごめん。嫉妬する有美が可愛くてつい。ちょっと意地悪し過ぎちゃったかな」


「し、嫉妬なんて……」


「大丈夫だよ。家に帰ったらうんと甘やかしてあげるから。有美が望むならいくらでも撫でるから。怒らないでよ」


「怒ってない! 怒ってない……し。けど、それはちゃんと守ってもらうから……」


 将来、もし寛司と一つ屋根の下で暮らすような関係になったら。その時は猫を飼いたいと思っていた。


 猫ちゃんを飼うのは昔からの夢だったし、多分寛司ならそれを許してくれる。一つのソファーに三人で身を寄せ合って過ごす……なんて、そんな風景は思い浮かべるだけで幸せそのものだ。


 けど……こんなことで嫉妬しているようじゃ猫ちゃんを飼うなんて無理かもしれない。


 寛司が私に似ていると言いながら猫を撫でている今の状況はなんか心がざわざわして、とにかく落ち着かない。ここが人目のある猫カフェでなく家の中なら、もうとっくに我慢の限界で私にも同じことをしろとねだっていた可能性すらある。


「こうやってすぐに可愛く嫉妬してくれる有美が見れるなら、将来は猫を飼うのもいいかもね。可愛い子を二人一緒になでなでできるし」


「ほ、本気で私のこと猫ちゃんと同列扱いしてない!?」


「まさか。俺の中の一番はこれまでもこれからもずっと有美だけだよ」


「〜〜〜〜ッッ!!」


 ぼふんっ、と頭が沸騰し、顔が熱くなる。


「うる、ひゃぃ……っ!」


「んにゃ〜♡」


 黒猫を飼うのだけは絶対にやめよう。




 そう、強く心に誓った。

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