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300話記念話9 猫カフェ3

300話記念話9 猫カフェ3



「お待たせしました〜。こちら、猫ちゃん用のおやつになります」


「ありがとうございます!」


 二匹の子猫を太ももに乗せながら、おやつという名の課金アイテムを手にして更に他の子達もおびき寄せる。

 

 おやつの封を開けた途端匂いを感じ取ったのか、周りにいた子達は全員吸い寄せられるように私の元へと向かってきた。どうしよう、とりあえず三個でいいかと思ってたのに。これじゃ足りないかも。


「すみません、猫用のおやつ四個追加で」


「は〜い!」


「えっ!? か、寛司? いいの?」


「もちろん。せっかく来てくれたんだからちゃんとみんなに行き渡るようにしないとね。仲間外れがいたらかわいそうだよ」


 猫用のおやつはチューブタイプのもので、一つ百円。


 一つ一つの値段は高くはないものの、塵も積もればというやつだ。私だけで三個、今の寛司のも合わせれば七個。すでに七百円出費が増えたことになる。


 これ以上は増やさないようにしないと。猫ちゃん相手だとついつい甘くなっていつの間にか財布の中身が空に、なんてことにもなってしまいかねない。


 猫ちゃんがいっぱい群がっているのを見て急いでおやつを持ってきてくれた店員さんからそれを受け取った寛司は、封を切って早速近くにいた黒猫に食べさせる。あぐらをかいている脚の隙間に潜り込んでから顔だけ出してぺろぺろとそれを舐める姿がなんとも愛らしい。


「にゃぁ」


「んにゃ〜おっ」


「な〜〜」


「わ、わっ!? ごめんね、すぐにあげるから!」


 少し羨ましいと思いながらそれを見ていると、いつのまにか猫ちゃんが正座していた私の周りを取り囲んで鳴き始める。ソファーの背もたれによじ登って耳元からおやつを狙おうとするやんちゃな子もいた。


「ふふっ、大人気だね。俺の方なんて二匹しか来てないのに」


「な、なんでだろ。私の方がいっぱいおやつをくれそうって思われてるのかな?」


「そうかも。有美は優しいし面倒見もいいから」


「面倒見なら寛司だっていいでしょ。あっ! さては私カモだと思われてる!?」


 一度意識し始めるともうそうとしか思えなくなってきた。


 新しく追加されたおやつを見てマイペースそうな二匹は寛司の方へ行ったけど、その他の五匹は未だ私に群がったまま。まるでカツアゲされてるみたいだ。


「あ、ちょっ!? おやつだけ持って行かないでよぉ!!」


 そして一匹、さっき耳元に来ていたヤンチャな子はとうとうおやつだけを掻っ攫って猫タワーの方へ戻って行ってしまった。


 ね、猫ちゃんにナメられるなんて……。


「むぅ。他の子達はおやつ食べるだけ食べて帰らないでよ……?」


「大丈夫大丈夫。その様子ならむしろそこで寝ちゃうんじゃない? ほら、有美の太ももとソファーで暖取ってる」


「ほ、ほんとだ。ちょっとウトウトしてるし……」


 背中を撫でても微動だにしない。人慣れして心からリラックスしているからだろう。


 他の子もおやつが無くなってもすぐにいなくなってしまうということはなく、私に引っ付いたままだった。やっぱり猫カフェの猫ちゃんは野良の子とは大違いだ。


「やっぱり俺より有美の方にいたい子が多いみたいだね。まあ俺が猫でも有美の方行くもんなぁ」


「か、揶揄わないでよ。って……その子すごっ。お腹見せてごろんっ、て。めちゃくちゃ懐かれてるじゃん」


「あはは、この黒猫ちゃんさっきからずっと撫でてアピールが凄いんだよ。まるでどこかの誰かさんみたいだ」


「誰かさん? ま、まさか……」


「うん。もちろん有美のことだよ」


「わ、私ここまでじゃないでしょ!? お、おおお腹見せてそんな無防備にごろごろ……そんなのしたことない!!」


 全く、失礼な。誰が猫だ誰が。


「でも有美って結構猫っぽいところあると思うよ? というか俺が猫派なの、有美に似てるからだし」



「……へ?」

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