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300話記念話7 猫カフェ1

300話記念話7 猫カフェ1



「も、貰ってきちゃった……」


 私がどうしたものかと頭を抱えながら眺めているのは一枚のチラシ。寛司の家に遊びに行った帰り、お母さんにお使いを頼まれて商店街を通った時に貰ったものだった。


『オープン記念! このチラシをお持ちいただいた方はドリンク一杯サービス!!』


 普段私はこういうチラシやティッシュを渡されそうになった時、基本的にはスルーするんだけども。これだけはどうしてもそういうわけにはいかず、ついつい貰って捨てることもできずに家まで持って帰ってきてしまったのである。


 というのも……


「猫カフェ……猫カフェ、かぁ……」


 そこは人生で一度は行ってみたいと思っていた猫カフェだったからである。


 ここら辺にできたなんて知らなかった。いい機会だし行ってみるか、なんて。なんとなくそんな気持ちで貰ったはいいものの、本当に行くかどうか尻込みしていた。


 仮にこれが一駅先、二駅先みたいなそこそこ距離のあるところなら一人でこっそりというのもアリだったかもしれない。が、マップを見る限りここはあまりにも近所すぎる。もし学校の友達にでも入っていくところを見られたりでもしたらと思うと尻込みせずにはいられないのだ。


 ならこのチラシをもらったところではなく他のちょっと遠目のところに行けばいいのでは、なんて思う人もいるかもしれないけれど、正直言って猫カフェの料金というのは高校生目線から見ると少しお高めだ。何度か調べたこともあるがあまり乗り気にはなれなかった。


 しかしここはとにかく安い。相場の半分ほどの料金しかかからないし、そのうえラテアートなんかもあったりしてめちゃくちゃ可愛いし。更にそこからこのチラシによってドリンク一杯無料サービスと来た。心も揺れ動くというものだろう。


「よしっ!」


 決めた。ここを逃したらまた先延ばしになって次はいつ行けるか分からないし。行けるうちに行っておこう。


 ちょうど明日は土曜日。いつも通り寛司の家に行ってだらだらするつもりだったけどヤメだ。


 早速スマホを開き、寛司に連絡を入れる。正直寛司に知られるのですら恥ずかしいし秘密の趣味にしたかったけれど、かと言って一人で行く勇気なんか無いし。知り合いに見られたら「寛司がどうしてもって言ったから」と押し付けちゃえばいいんだ。


『寛司、明日なんだけどさ。行きたいとこあるんだけどいい?』


『ん? どこ行きたいの?』


『猫カフェ。近くにできたらしいからついて来てよ』


『へえ、そんなのできてたんだ。分かった。じゃあ明日一緒に行こっか』


『ありがと! じゃあ明日、十時に集合ね!』


 私のメッセージに『OK』のスタンプが返って来たのを見てスマホの電源を消す。


 確か前に寛司も私と一緒で猫派だって言ってた気がするし、意外と乗り気だったのだろうか。もし気に入ってくれれば行きつけにしたりしたいな。


「寛司と猫カフェ……えへへ」


 無意識に頬が緩む。猫のことは大好きだけど家では飼っていないし、友達にも飼っている人はいない。野良猫は懐いてくれないし。ちゃんと撫でることができるのは今回が初めてだ。


 楽しみな気持ちを胸に秘めつつ、課題のノートを開く。明日ちゃんと一日遊べるように土日の分の宿題を全部終わらせておこう。




 明日はいっぱい……いっぱい猫ちゃんと触れ合えるといいなぁ。

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