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300話記念話4 深夜、ロッカーにて1

300話記念話4 深夜、ロッカーにて1



「はぁ……なんでこんな事に」


「そ、そんなこと言わないでよぉ! 彼氏さんは私をこの暗い中一人で行かせるの!?」


 ぎゅうぅ、と俺の腕にしがみつきながら。由那は涙目で叫ぶ。


 俺たちは今夜の学校に来ていた。正門は閉まっていたので裏門の、それもよく分からないフェンスの穴から入るという不法侵入ムーブをかまして。


 こんなの見つかったら絶対怒られるんだろうな。相手が由那じゃなかったらついてくる事なんてしないのだが。


 仕方ないだろう。明日の一限で提出しなければいけない課題ノートを机の中に忘れて来たというのだから。しかも今日の日中一度貸したものだから、俺のノートまで巻き添えで。


 おかげで夜にやって朝に回答のみを写すという荒技もできない。何せノートが無いせいで問題すら分からないのだから。寛司も中田さんも、在原さんも蘭原さんも。なんでかメッセージの返信どころか既読すらつかないし。


「うぅ、暗いよぉ……ひっ!? ね、今何か音しなかった!? ゆ、ゆゆゆ幽霊だぁ!! 追い払ってよぉ!!!」


「物音なんかしたか? というか由那さんうるさいです。見回りの先生に見つかったらどうするんだよ」


「そ、そんなこと言ったってぇ。なんでゆーしはそんなに落ち着いてるのぉ!?」


「隣がうるさいと怖くなくなるんだよ」


 まあ俺も結局のところ一人で来れるほど勇敢ではないしな。由那と来ることが確定してた時点でこの事態は避けようがなかったんだけども。


 にしてもめちゃくちゃ歩きづらい。可愛いけどもうちょっと落ち着いてほしいものだ。


 そんなことを考えながら歩いたり階段を上がったりすることしばらく。教室の目の前につき扉が施錠されていないことにホッとしてから、中へと入る。


 一瞬、ホラー作品とかだとこういう時開けたら中に誰かいるんじゃないかと思い足がすくんだものの。もちろん誰もいなかった。


「あ、あった! 私のとゆーしのどっちも! は、早く帰ろ! こんなところにずっといたらおかしくなっちゃいそうだよぉ」


「だな。帰ったらこの課題もやらなきゃだし」


 ここに長居する意味もない。ノートの回収はできたことだしさっさと退散しようか。


 開けっぱなしにしていた扉の元へと戻り、流石にそのままで買えるわけにも行かないのでゆっくりと扉を閉めようと────


「んん? オイ!! 誰かいるのかぁ!?」


「ぴっ!?」

「うおっ!?」


 した、その時。扉が立てた音に反応するかのように、廊下の端から図太いガミ声が反響した。


「な、なんだ!?」


 咄嗟に反応して教室の中に戻ると、それと同時にさっきまで俺たちがいた廊下が懐中電灯の灯りによって照らされる。危なかった、後ちょっと反応が遅ければ俺たちの存在はバレていたことだろう。


「ま、まずいよゆーし! あの声……鬼塚先生だよぉ!!」


「お、鬼塚ぁ? 誰だそれ……グレートなティーチャーな予感のする先生だな?」


「そんなこと言ってる場合じゃないって! 鬼塚先生はこの学校きっての鬼教官だよ。生徒指導もしてる体育の先生で、あの人に怒られると反省文は多いし何より怖いしで大変らしいよ!? と、とにかく見つからないようにしなきゃ!!」


「マジか。ってヤバ!? なんかクッソでかい足音が走って来てる!?」


「ここら辺から音がしたぞォ!! まぁた不法侵入の生徒かぁ!? 今日も見つけ出したらタダじゃおかんッッ!!」


 まずい、まずいまずいまずい。このままだとあっという間にこの教室まで乗り込んできてしまう。


 もう逃げるのは無理だ。せめてここが一階だったら窓からなんてのもできたかもしれないが、ここは三階。なんちゃらマンでもない限り落ちたら怪我じゃ済まない。


「と、とりあえず隠れるぞ! えっと……あ、あそこだ!!」


 藁にもすがる思いで教室の後ろへと走った俺たちは、急いで身を潜める。


「いたっ!? ゆ、ゆーし痛い! ここ狭いよぉ!!」


「ワガママ言うなって! ほら、早く詰めてくれ! 俺も入らないとヤバいからっ!!」





 高校生二人がギリギリ入れるか入らないかという、本当にギリギリのサイズなロッカーへと。

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