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299話 それぞれの相手と

299話 それぞれの相手と



「んにゃ〜っ! 楽しかった〜っ!!」


「あ、アシカさん可愛かったです。イルカさんも……」


「へへ、みんな楽しんでくれたみたいで何よりだな。ところで神沢君、そのやたらと大きい紙袋の中身はなんだね? 家族へのお土産とのことだけども」


「た、ただのクッキーとストラップだ」


「ふ〜ん。勇士、実は誰よりもはしゃいでたんだね」


「はしゃ!? んなわけ……いや楽しかったけども!」


 空が茜色に染まり、夕陽が見え始めた頃。俺たちは水族館を出て電車に乗り込んでいた。


 言えない。ショーが終わった後こっそり俺と由那の分のベルーガさんぬいぐるみを買ったなんて。いやまあ言えないことはないんだけども。生まれて初めてこういうぬいぐるみを買ったからちょっと小っ恥ずかしいのだ。


「有美も楽しんだか? なんか渡辺君とえらくイチャイチャしてたみたいだなぁ。館内で噂立ってたぞ」


「へえっ!? ひ、ひひ人違いじゃ……」


「黒髪ロングの美少女と茶髪イケメンがイチャコラしてたって。ん〜? まあめちゃくちゃ特徴的ってわけでもない情報だけどヨォ。そんなピンポイントで似たカップルが現れるもんかねぇ?」


「〜〜〜〜ッッ!!」


 あの噂話、在原さんも耳にしてたのか。


 ま、十中八九中田さんと寛司のことなんだろうなぁ。今の顔真っ赤にして口パクパクさせる反応も流石に分かりやすすぎるし。


「あ、ちなみに白い髪したクッソ可愛い子がいたってのも話題になってたぞ。チャラ男が神沢君と発してる甘々オーラを前にナンパ断念して歯痒い表情してるのも見た」


「ちょ、待て。それは初耳だぞ」


「可愛い子なんてそんなぁ。えへへ、私とゆーしのイチャイチャオーラはもうナンパさんも撃退できるようになったんだね! 愛の力だぁ〜♡」


「ひ、引っ付くな」


「照れちゃってもぉ。大丈夫だよ、これからもゆーしがずっと守ってくれるって信じてるもん」


 ったく、まさか俺たちが気づいていないところでそんな事になっていたとは。


 由那が可愛すぎるから人の視線を惹きつけてしまうのは仕方ないとして、誰か別の男から狙われるのは彼氏として看過できない。在原さんは俺たちのイチャイチャに怖気付いてナンパを断念していたと言っていたな。これからも外に出る時はずっと由那と一緒にいよう。悪い虫を一匹でも近づけたくない。


 そんなことを心の中で一人決意しながら、旅館へのバスが出ている駅で電車を降りる。ここからはおよそ十分もあればあの旅館に辿り着くはずだ。


「ま、バカップル共も色々とお楽しみだったみたいだけどよ。私は私で最高に楽しめたぜ。な、ひなちゃんっ」


「ひゃ、ひゃひ! あ、手……あったかい、です。もっと握ってくだしゃひ……」


「ったく甘えんぼだなぁ。よぉし、セットでハグもしてやるぜ!」


「ひゃひひひゃ! あへぇ……」


 って、知らない間になんかあの二人どんどん距離が近づいてないか? 元々在原さんはパーソナルスペースの狭い人だったが、それにしても、だ。まあ本人達が幸せそうならいいか。あの手の関係性に男が首を突っ込むのはタブーだしな。


 それぞれがそれぞれの相手と水族館デートを楽しみ、より親睦を深めて。俺たちの旅行一日目は終わりへと近づいていく。




 そして、同時に。旅館での長い夜が始まった。

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