297話 イチャイチャ水族館デート6
297話 イチャイチャ水族館デート6
「おお、これが噂のメンダコか!! 最近やけにぬいぐるみやらミニキャラやらで見てたが……実物も中々可愛いじゃねえかっ!!」
「ほ、ほんとですね。あっ、でも隣のダンゴムシみたいなのはちょっと苦手です……」
「あ〜、ダイオウグソクムシな。そっちは私も流石に触れる自信ねえや」
私たちは今、深海魚と深海生物ばかりが集められたコーナーに立ち寄っている。
由那ちゃんたちと別れた後にひなちゃんを連れて、だ。ひなちゃんには申し訳ないことをしただろうか。あのバカップルどもにせっかくの機会で水族館デートを楽しませてやりたいという私の粋な計らいだったが、思えばこの子だけは巻き込まれた形。みんなで回ることを楽しみにしていたのであれば怒られても文句は言えないだろう。
「いや〜、ごめんなひなちゃん。私と二人きりにしちゃって」
「へ? ど、どうして謝るんですか?」
「ん〜、やっぱりみんなで回りたかったかなって」
「そ、そんなことないです! いや、ないことはないんですけど……私は薫さんと二人きりで回れて嬉しいですから!!」
おお、なんていい子。ほんとひなちゃんと一緒にいると癒されるなぁ。
それにしてもあのバカップル共は水族館デートをちゃんと満喫できているだろうか。あとでイルカショーの時には再度合流するつもりだからそれまで目一杯イチャコラしててもらって。本当は覗きに行きたい気持ちもあるけど今はやめといてやろう。
私は私で、美少女とのデートができていることだしな。
「わ、私は薫さんと二人きりの時間……だ、大好き、なんです。みんなでワイワイするのも楽しいですけど、こうやって二人でゆっくりも……私からしたら最高の時間、ですから」
「……プロポーズか?」
「へっ!? ち、ちがっ! 今のはその、そういう意味ではなくっ!!」
「ふふっ、ごめんごめん。冗談だ。ほんといい子だなぁ、ひなちゃんは」
私と二人きりの時間が大好き、か。
中々小っ恥ずかしい台詞を吐いてくれるもんだ。自分で言ってるくせに恥ずかしそうにもしてくるもんだからこっちまで照れて仕方ない。
ただ、やっぱり思う。
「ひなちゃんを誘って良かったよ」
私と有美、渡辺君、由那ちゃん、神沢君。
流れで結成された仲良しグループだったが、ここにひなちゃんを入れて本当に良かったと思う。
別に元々バカップル二組に挟まれてるから居心地が悪かったとかそういうのは本当全然無い。私はいつも何をするにも一人行動が一番多いし、慣れどうこう以前に私の性根的な問題でそのポジションを楽しんでいる節があったからだ。
「……っし。ひなちゃん、次は魚触れるコーナー行こうぜ! ここ小さいサメとエイ触れるらしいぞ!!」
「さ、触るんですか!? そ、それは流石に怖いと言いますか……ひゃっ!?」
「いいからっ! 私といる時間が好きなんだろ? ならとことん味合わせてやるぜぇっ!!」
けど、今はひなちゃんといることが楽しい。一緒にゲームをしたり遊んだり。そしてこうやって、デートみたいなことをしてみたり。
ひなちゃんの言葉をなぞるわけじゃないが……
最高の時間だ。




