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296話 イチャイチャ水族館デート5

296話 イチャイチャ水族館デート5



「ほら、今も耳まで真っ赤にして────痛っ、ちょ、有美? いててっ」


「バカ、本当……。こっち見んなっ!」


 駄目だ。一度溢れた熱が止まらず、全身が熱い。


 顔も耳も、身体も。熱に包まれて体温が上がっていくのを肌で感じる。きっと今、私は見られちゃいけない顔をしているはずだ。


 寛司の腰を小突きながら、必死に顔を隠して。けどそんな様を面白がるコイツは、意地悪にも覗き込むようにして顔を近づけようとする。


 本当に意地悪だ。一人だけスカした顔して。


 ズルい。どうせ私はしばらくこのままだ。一度赤くなった顔を元に戻すなんて、そうそう簡単にはできない。けどいつまでも隠し続けるのはきっと無理で。


 そう察した私の反射的な行動は、速かった。


「ん゛っ!? ゆ……みっ!!」


「ん……んっ!」


 こっちが反撃して来ないと思って無防備に近づいているその顔を無理やり引き寄せて。唇を塞ぐ。


 たったの数秒間。しかし、確かに舌を絡ませてする深いキス。唇を離すと、寛司はあっけに取られたと言わんばかりに動揺した顔をしていた。


「私だけ赤くなるなんて、ダメ。いつまでも優位でいられると思わないでよね」


「っ……」


 ふん、どうだ。些細なものかもしれないけど仕返ししてやった。


 いつもいつも私を自分のペースに引き摺り込んでは好き勝手して。


 たまには私の気持ちも味わってほしい。


 私だって成長してる。たしかにこれまではずっと寛司にドキドキさせられっぱなしだったし、多分これからもそうなんだろうけど。


 せめて、されっぱなしじゃないってことくらいは────


「ひっ!? か、寛司? 力……強いよ? どうしたの、急に肩掴んで……へぷっ!?」


 あ、れ? なんでキスされ……あ、気持ちぃ……。


「は、ぇえ……?」


「そんなことされたら、ガマンできなくなるに決まってるでしょ。恥ずかしがって必死に仕返ししようとしてくるのもいいけど、今のは逆効果」


「あぅ。ううぅ……」


「目、とろんとしてきたね。これは責任取らなきゃかな」


 し、仕返しの仕返し……された。


 勝ち誇って油断していたところへの一撃。クリティカルヒットしたキスに、私はものを考えられない状態へと陥る。


 麻痺した脳みそはただ一点、寛司のかっこいい顔だけを見つめて離さない。そしてその瞳に見つめられれば見つめられるほど、また顔に篭った熱量が上昇していく。


「一旦人目に付かないところ行こっか。自分のせいもあると思うけど、″限界″来てるよね?」


「…………う、ぁう」


 こくん、と頷いてしまう。この後彼についていけば何をされてしまうのか気づいているのに。いや……気づいているからこそ、か。


 手を繋ぎ、トンネル水槽を出て。どうやら私と寛司がしていたことを目撃してしまっていたらしい何人かからの視線を感じながら、歩く。


 心臓が高鳴って、隣にいる寛司にまで届いているんじゃないかと思うくらいの爆音を響かせている。もう逃げ出すことはおろか、繋いでいる手を離すこともできない。




 やっぱり私は、一生コイツには勝てないらしい。

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