293話 イチャイチャ水族館デート2
293話 イチャイチャ水族館デート2
「見て見て、これ! チンアナゴだ〜!」
「お、ほんとだ。何気に生で見たの初めてだな」
「えへへ〜、チンアナゴ〜っ♪」
「ちょっと待てそのポーズは駄目だ。色々と問題がある」
にょきっ、と上に向けて手を伸ばし、どこかの某有名アニメで見たあのポーズを再現する由那。いや、クッソ可愛いけども。
「私チンアナゴ好きなんだ〜。にょこっ、て砂の中から出てきて私のこと見つめてくれるところ、すっごく可愛い!」
「チンアナゴ……なぁ。あれ、そういえば由那って魚苦手じゃなかったか? ほら、目が駄目だとか」
「ん〜? チンアナゴは可愛いから平気!」
「そっか。なら良かった」
由那は大の魚嫌いである。
刺身も焼き魚も食べることができる彼女だが、それらを自分で作ろうとはしない。
なんでもあの青魚なんかで特有の″ギョロ目″が苦手らしく、怖いからとスーパーに行く時も魚コーナーには立ち寄らないほどだ。ちなみに栄養バランスを考えると魚も食べておく必要はあるので、そこは缶詰なんかで代用している。本当は魚料理の時だけ俺が手伝う……なんてことができたら良かったのだが、生憎俺も苦手なもので。
魚の匂い、見た目、調理するとなった時に必ず目にするであろう血。その全てが苦手な俺にとって、魚料理を調理することはかなり難易度が高い。
「チンアナゴって飼えないのかな? 餌も小さそうだし、用意する水槽もあんまり大きいイメージは無いもんね。意外とメダカさんとかと同じくらい飼いやすかったり?」
「う〜ん、どうなんだろうな。少なくとも俺はペットショップで売ってるとこは見たことないけど」
まあそもそも魚が苦手だからそのコーナーに立ち寄ることもないんだけども。ただ正直、家でチンアナゴを飼っているという話は一度も聞いたことがない。あってもメダカやグッピー、金魚くらいだ。多分何かしらの要因があってペットにはしづらいのだろう。
「む〜、飼いやすいなら将来飼ってみたかったなぁ。ね、ゆーし!」
「いや、ねって言われても」
「あ、猫ちゃんでもいいよ! とにかく将来ゆーしのお嫁さんになったら、二人のお家にペットさん欲しいなぁ」
「お、お嫁さん!?」
「? してくれないの?」
「あ、いや……えと……」
と、唐突に突拍子もない話をぶっ込んできたな。
お嫁さんにしてくれないの、だと? したいに決まってるだろこの野郎。これまでもこれからも、俺が隣にいて欲しいと思う女の子は由那一人だけだ。
「ね、猫は一匹で充分だな。俺の隣に今可愛いのがいるし……」
「にゃ〜おっ♡ そっかぁ。ゆーしは私一人いれば満足なんだねぇ」
「な、なんだよ。悪いか?」
「ううん。私もゆーしさえいてくれればいいもん。同じ気持ちで嬉しいっ♡」
クソ、可愛いな。やっぱりペットなんて飼うべきじゃないだろこれ。
確かに犬や猫を飼えば癒しが得られる。可愛いだろうし、愛情を持って接するだろう。
けど、駄目だ。
由那という、俺が絶対的好きをぶつける相手がもういるのだから。他の誰かに……たとえそれがペット相手だったとしても。愛情を残しておいてやれる気がしないしな。




