291話 最後の目的地
291話 最後の目的地
「ふい〜っ! 食った食ったぁ!」
「か、薫おじさんみたい……つまようじ片手にお店を出てくる女子高生なんて初めて見た」
「だ〜れがおじさんじゃ誰が! ったくこれだから最近の若いのは……」
いや、あなたもその″若いの″のうちの一人なんですけどね。
そんなツッコミを心の中でかましながら在原さんたちの後ろを歩く。
お昼ご飯はここらへんで名物……というか、ここら辺にしかないらしいチェーン店のハンバーグ屋さんだった。
とにかくサイズが大きく、目の前で店員さんがそれを切り分けてソースをかける姿はまさに圧巻。普段からかなり食べる方である由那ですらお腹いっぱいにしたほどだ(ちなみに蘭原さんは在原さんに、中田さんは寛司に少し食べてもらっていた)。
「さて、じゃあそろそろ本日最後の目的地に向かうとしますかね。お、あそこにいいゴミ箱がっ」
「あ、あっ!? か、薫さん! 私が捨ててきますよ!! ちょうど飲み物も買いたいと思ってたので!!」
「ん、そうかぁ? へへ、すまねえなぁ」
使っていたつまようじを口から離し遠くのゴミ箱へ投げ入れようとした在原さんを慌てて止めると、蘭原さんはそう言って。てててっ、とそれを持ってゴミ箱の元まで走る。
「ふ、ふへへっ……在原さんが使ってたつまようじ……一生の宝物にしなきゃ……っ!!」
うん、もうあの人の不審者ムーブも見慣れたものだ。どうやら気づいているのは俺と由那、寛司だけのようで、中田さんと在原さんだけは気取る素振りを見せなかったが。まあ知らない方が幸せなこともある。多分それを分かっているから寛司も中田さんに教えることはしないのだろう。
それから蘭原さんがお茶を買い戻ってくると、六人で駅へ。来た道を戻るように進み、旅館からバスで向かった駅の一つ隣の駅で降りてから歩くこと数分。
「ふっふっふ。まさに一日目のラストを飾るに相応しい場所だ。見よ、このとてつもない大きさを! 規模をッ!!」
「「「「「おぉ〜っ!!」」」」」
むふんっ、とご立派な胸を張りながら何故か自分のものかのように在原さんが見せびらかしたそれは、壁一面にサメやマグロ、カメにペンギン、イルカなどが可愛らしくデフォルメされイラストとして描かれた建物。
少なくとも俺の見たことがある中では最大。ちょっとした街のショッピングモールくらいのサイズ感なのではと思うほど、存在感と共にその大きなサイズ感を示している。
「わ〜っ! 水族館だ〜っ!!」
水族館。ここはどうやら日本でも有数の規模を誇るとても有名なところらしい。
なにせ明日は一日中いる場所が一緒だからな。こうやって動き回れる今日の、そして最後に持ってくるとすれば確かにベストな施設な気がする。
「ね、イルカさんいるかな!? ペンギンさんも見た〜い! あとサメさんもっ!!」
「はしゃいでおるなぁ由那ちゃん。安心しな、ココナは今言ったやつらは全員飼育されてるゼッ」
「ほんとに!? じゃあ早く行こ! ほら、ゆーしも早くっ!!」
「お、落ち着け。落ち着けって! 分かったから……ちょ、引っ張るなぁ!!」
テンションマックスな由那に先頭が入れ替わり、入場チケットを購入する受付へと進む。
水族館なんて何年ぶりだろう。




