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290話 相思相愛ならではの3

290話 相思相愛ならではの3



 ぴくっ、ぴくっ、と。強く密着するたびに熱度は上がり、由那の身体が小さく震える。


 お互いに呼吸することよりもキスを優先し、ハグで身体をどんどん近づけては抱き合うように姿勢を低くしていった。


 本当に押し倒しているみたいだ。甘い匂いも、荒い息も。ただのキスで出していいものを超えて来つつある。


「は、ぅっ。ゆーしぃ? も、もうシてくれないのぉ?」


「っ……!」


 まずい。本当にまずいぞこれは。完全にテンションが家のベッドの上でごろごろイチャイチャしている時と同じになってる。


 ここはバスの中だ。周りに人がいて、友達がいる。俺たちが座っていた座席から姿を消していればきっとすぐに気付かれるだろう。どこに行ったのか、と探し始めたら座席の後ろを覗かれて、今の姿を見られるだろう。


 嫌だ。もろに押し倒してキスをしているところを見られるなんて恥ずかしいし。あと、この顔を……俺の前でだけしてくれる由那のこの表情を、誰にも見せたくない。


 横の座席に人がいないことは幸運だったが、一つ前の座席には寛司と中田さんが座っているのだ。


「ぷあっ♡ えへへ、こんな場所で……私の彼氏さんはやらしいんだぁ」


「お、お前なぁ。誘って来たのはそっちだろ」


「でも、押し倒して来たのはゆーしだよ?」


「うぬぬ……」


 確かにそうだけども。キスをするとなればすぐにやめられる自信はない。だからこうして、せめて時間がかかっても少しの間ならバレないよう工夫したのだ。


 それをコイツは、さも俺がガマンできなくなったかのように。いや……まあ確かにガマンできなかったことそのものは事実だけれど。なんかこう、微妙に納得がいかないというか。


「やっぱりズルいな、由那は」


「私から見たらゆーしの方がズルいよっ。かっこよすぎるもん……」


 ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ。


 心臓が跳ねている。だから、お前はそういうところがズルいんだって何度言えば……。


『まもなく終点、日傘駅〜。日傘駅〜』


「「っ!?」」


 バスの運転手さんから、放送音声が流される。


 突然流れるそれに二人でビクついた。由那は受け入れ体勢で目を瞑ってもう一度唇を差し出し、俺はそれに応えるように顔を寄せようとしていた瞬間だったからだ。


「続きはまた旅館で……ね?」


「そ、そう……だな」


 まるで我慢できなくなった子供を躾けるお姉さんかのように。俺の口に人差し指を当ててどこか得意そうにそう呟くと、由那は背中に回してきていた腕をどける。そしてそれと同時に俺が起き上がると、押し倒し押し倒されていた体勢から、ただ座席に座る二人へ。


 結局三回も繋がってしまった。由那は変な声を上げそうになっていたし、むしろよくバレなかったものだな。


「ゆーし成分、いっぱいチャージしちゃった。これなら夜までガマンできそっ」


「我慢て……も、もしかしてさっきまでずっとしてたり、したのか?」


「うん? みんなとコンビニ集合したあたりからずっとキスしたかったよ?」


「コンビニ!? それって一番最初じゃ……」


「だって、おやすみのキスしてないもん。おはようのキスだって……」


「な、なんかすまん。かなり我慢させてたんだな」


「えへへ、いいよっ。とりあえずその分は今シてくれたもんね。あ、もちろんこの後シたくなった分は夜にたっぷり……ね?」


「は、はいっ。頑張ります」


 た、たっぷりて。


 夜の旅館は二人きりだ。いつもと違う場所で、違う服装で。一晩中ずっと二人きり。


 そんな状況下にキスを半日我慢した由那を置いてしまったら、一体どうなってしまうのだろう。


「ね、ゆーし」


「なんでしょう?」


「好きっ。大好き。世界一愛してるよっ。いっぱいいっぱい好きを伝えるから、ゆーしは……彼氏さんとして、たっぷり私を可愛がってね♡」


「〜〜〜〜ッッ!!!」


 ああ、やっぱりコイツは……。



────可愛すぎて、ズルい。

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