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288話 相思相愛ならではの1

288話 相思相愛ならではの1



 一度怖い思いをして渡った橋をもう一度渡らなければいけないというのは、中々に辛いものがあった。


 特にごねたのは由那で、このままここでラムネソフトを食べながら余生を過ごすなんて言っていたけれど。「そんなに駄々をこねるなら帰りはあのワイヤーを滑るやつで強制的に向こう側に帰すぞ」と言ったらスンッ、と大人しくなった。


 ちなみに余裕綽々だった在原さんと蘭原さんはそっちを使って颯爽と帰って行ったのだが。俺たち四人は流石にそんなものについて行けるわけもなく、しっかりと橋を渡って向こう側へ。こうしてスカイロードの往復旅は終わりを告げたのである。


「や、やっとちゃんとした地面に戻れたよぉ……。もう高い所は絶対に嫌!!」


「あはは、私たちはかなり楽しめたけどなぁ。な、ひなちゃんっ」


「は、はいっ! 特に帰りのは……なんというか、怖かったんですけど凄く景色が綺麗で。まだドキドキしてますっ!」


「ふっふっふ。次はバンジージャンプだな!」


 勘弁してくれ、と心の中でつぶやいた。


 というか蘭原さん、結局終始平気そうにしていたな。ちゃんと在原さんのペースについていける人はやはり彼女しかいないのかもしれない。蘭原さんもどこかたまにネジがぶっ飛んでいるところがあるし……。


「って、みんな。そろそろバス来るよ? 早く行かなきゃ」


「お? もうそんな時間かぁ。よ〜し、じゃあ次は腹ごしらえ行こうか!」


「お昼ごはんのお店ももう決まってるの?」


「あたぼうよ! 薫さんにまっかせなさぁい!!」


 寛司に諭され、全員でバス停へ。俺たちが着くのとほぼ同時にやって来たそれに乗ると、あっという間に山道を下っていく。


 ここからはまた駅に戻り、次は電車で昼ごはんの店に向かうのだという。


 時刻は昼の十一時半。店は十三時から予約をとっているそうなので、スケジュールとしては少し余裕があって丁度いい。


「んにゃぁ〜っ! 疲れたぁ……」


「叫び疲れか?」


「むぅ。そんなに疲れるほど叫んでないもん。動き回ったから疲れたのっ!」


「う゛に゛ゃあ゛あ゛っ!! って言ってたけどな。橋の上で」


「もぉ! 揶揄わないでよぉっ!!」


「はは、ごめんて」


 まあ実のところ、俺も結構疲れた。体力的にというよりはどちらかというと精神的に、だろうか。


 恐怖を感じるあの高さの場所にずっといたのだ。何か激しい運動なんかをしなくても身体は疲れを感じていく。実際俺は由那みたいに叫んだらしていなくても、今こうしてバスの座席に座っているだけで少し眠気を感じ始めているしな。


「ゆーしの手……熱いよ? もしかしておねむ?」


「それは由那もだろ。全く、お互いそういうところ分かりやすいよな」


「えへへ〜、分かりにくいより分かりやすい方がいいよっ。その方がゆーしのこと、いっぱい知れるもん」


「それもお互い様……か」


「うんっ♡」


 由那は何かを企んでいる時やねだろうとしてくる時、かなり分かりやすい。ああ、今俺に何をしようとしているなとか、何をしてもらいたいんだな、とか。


 そしてそれは、今も。




「さて、ここで彼氏さんに問題です。私は今、世界一大好きでかっこいいゆーしさんに何をしてもらいたいと思ってるでしょ〜かっ!」

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