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287話 真の吊り橋効果

287話 真の吊り橋効果



 予想通り、順番はすぐに回ってきた。


 在原さんと俺、由那、寛司はコーンで。蘭原さんと中田さんはカップでラムネクリームソフトを注文して、全員が受け取ってから近くのベンチに腰掛ける。俺たちの番が終わった後から徐々に列は長くなっていったため、多分ギリギリのタイミングだったのだろう。


「はい、ゆーしっ♪ あ〜んっ!」


「あ〜……」


 そしてもはやいつもの如くと言っても差し支えないほど自然に彼女さんは一口目を差し出してきた。


 とぐろ状に巻かれたクリームソフトをお互い一口口に入れると、甘くとろけるようなバニラ感とパチパチとしたソーダパウダーが絶妙にマッチして舌の上に幸せを運ぶ。頑張ってよかった、と。そう思わせてくれる味だ。


「おいひいっ! ね、ねっ! パチパチする〜!!」


「なんか初めての食感だな。これ、この組み合わせ死ぬほど合ってて最高に美味いぞ」


「えへへ、それに加えて頑張って得たご褒美っていうのと……何より世界一大好きな彼氏さんが隣にいるからだよ?」


「っ……それはまあ、うん。俺も由那が隣にいてくれるからより美味しく感じてるのかもな……」


「あ〜、神沢君照れてら。な〜にを初心ぶってんだか。その程度のイチャイチャなんて毎日してるだろうに」


「う、うるさいな。……由那は毎日可愛いんだよ。だから慣れても慣れ切らないっていうか……ああもう、何言わせんだ!?」


「か、可愛っ……毎日……へへっ♡」


 売り言葉に買い言葉。在原さんに揶揄われつい本音を口にしてしまうと、言った側も言われた側もどこかいたたまれなくなって。しっかり身を寄せ合って密着しながらも、顔に熱を篭らせてついつい黙ってしまう。


 というかこれに関してはもう由那が悪いだろ。可愛すぎる奴が可愛すぎる行動をとれば、必然的に俺はドキドキさせられざるを得ない。何が「世界一大好きな彼氏さんが隣にいてくれるから」だ。そんなことを言われて喜ばない彼氏はむしろどうにかしている。


「ゆーしって……さ。いつも不意打ちで私のことドキドキさせてくるよね。ズルいなぁ……もうっ」


「そ、それを由那が言うか!? 常日頃から俺がどれだけお前に……」


「お前、に?」


「……ナンデモナイ」


「恥ずかしがっちゃうゆーしもしゅきっ♡」


 ったく、本当にもう。なんというか……なんというか。


 蘭原さんはどこか恥ずかしそうに。在原さんは飯うまとでも言わんばかりのニヤけ顔で。真正面から視線を送られているというのにお構いなしかコイツは。


 というか、さっきからもう一組のカップルが静かだな。何してんだ……って、あれ?


「在原さん、中田さんと寛司は?」


「え? あ〜、ソフト食べ終えてから二人してトイレ行ったな。二人して……同時に。特に有美がどこか落ち着きない感じで」


「……へっ?」


「ま〜すぐ戻ってくるだろ。あの様子だと何してるのかは大方想像つくけどな」


 ああ、そんな含みのある言い方をされてしまっては俺も少し想像がついてしまうじゃないか。


 我慢できなそうにソフトを食べ終えた途端寛司を連れてここから離脱した中田さん。そんな彼女が我慢できなくなったのはただのトイレか、はたまた……。


(これも吊り橋効果のせい……ってか?)


 


 あまり深く考えないことに決めた。

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