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279話 日の丸と笑顔

279話 日の丸と笑顔



「お、いた。……って、何してんだ」


「え? 勇士もいつも江口さんとやってる甘やかしイチャイチャだけど」


「ひ、一言余計だな。まあいいけども」


 一度全員パーキングエリアの中に入り、寛司達と合流する。


 車の中にいないからどうしているのかと思えば。俺達が見つけた時には中田さんと手を繋ぎ、頭をよしよししながらまるで見せつけるかのように甘々オーラ全開濃厚イチャイチャを繰り広げていた。


「ふふっ、朝からお熱いなぁ有美? 等々見境無くなり始めたか」


「う、うううっさい! 別にこれは、ただ成り行きというか……私から求めたわけじゃないから! 決して!!」


 と、言いながらも寛司と繋いでいる机の下の手は解かない。やっぱりもうどう見てもデレデレだ。数ヶ月前のちょっとツンツンしてた雰囲気はどこへ行ったのやら。


 元々甘えんぼな、それこそ由那と根本の部分で似た雰囲気を何処となく感じてはいたが、まさかここまでオープンになるとは。寛司と二人きりの時はいつもそうなのだとしても、それを俺たちが来る確率の高い場所・時間でし続けるというのはやはり以前の中田さんならしなかった事な気がする。


(やっぱり在原さんの言う通り、きっかけが……んでその内容は……)


「そ、それくらいにしてあげましょう! ほら、薫さん! 早くしないとしたかった事できなくなっちゃいますよ!?」


「お、おう? まあそれもそうか。うん、有美を弄るのは夜の旅館での楽しみに取っておくとして。オイバカップル、ついてこい! 日の出と一緒にみんなで写真撮るぞ!!」


 何故か顔を真っ赤にしながら在原さんを止めた蘭原さんのファインプレー(?)により、中田さんは急死に一生を得る。


 そして俺たちもまた。このままここでダラダラしていると逃してしまっていたかもしれない日の出が、ちょうどその全体像のうち半分ちょっとを水平線の向こうから露出させ、一番美しい状態で。俺たちの背景として出現したことによって完璧なタイミングでの撮影を始めたのだった。


「うーし、じゃあお前らさっさと並べぇ。っと、撮影するスマホは薫ので────」


「ちょ、奈美ねえも映るんだよ! すいませーん!! 写真撮ってくれませんかー!?」


「薫!? ああもう、恥ずかしい……なんであんな大声で走って行くのよ……」


「いいじゃないか、在原さんらしくて。じゃあ俺たちは早めに並んどこう。せっかく撮影役の人連れてきてくれても俺達がもちゃもちゃしてたら意味ないからね」


「は〜い! はいはい! 私はゆーしの隣〜!!」


「あ、あの……私は端っこがいいです……」


「はぁ……ったく。楽しそうだなほんと……」


「よぉし、お前ら並べ並べぃ! はい、あとひなちゃんは私の隣な! バカップルに負けないように私らでセンターを飾るぜ!! ほら、奈美ねえも来いよ!!」


「なんだそのノリ。少年漫画かよ」


 クスクスと笑い声を漏らす由那の横顔に、俺も思わず笑みを浮かべて。それが寛司と中田さんに伝染し、良い笑顔の在原さん、ぎこちないながらも確かに隠し切れない喜びがある蘭原さん、そして頭をポリポリと掻いて呆れたように、でもどこか満足そうに。先生も笑う。


 そんな、三者三様ながらも。確かに全案の笑顔が日の丸に照らされて一枚の画角へと収まる。




 まだまだ、旅行は始まったばかりだ。

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