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278話 問題児は

278話 問題児は



 ジリリリリッ。運転席と助手席の間に置かれていたスマホがアラーム音で朝を告げる。


 朝日が少しだけ顔を出し、真っ暗ではなくなった車内。そこでいち早く目を開けその音に反応したのは、俺であった。


「んぐぉ。うる、さぁ……」


 微かに背中が痛い。そう思い後ろを見ると、扉の取手の下にあるポケット部分の出っ張りが強く俺の背骨を押していた。どうやら由那に抱き枕にされた後、数時間もの間ずっとそうして背中を圧迫され続けていたらしい。


 俺が起床すると同時に横からも何かに頭を打ちつけたかのような音が聞こえてくる。


 蘭原さんだ。そしてその後由那も半分寝ぼけながらも目を開けた。


 想像通りというかイメージ通りというか。何故か後部座席から姿を消しているカップルを除くと、まだ目を閉じてぐっすりな様子なのは前の席にいる二人。


 先生はアイマスクをしていびきをかいているし、在原さんはそもそもイヤホンで何かを聴きながら寝ているようなので鼻からアラームで起きる気が無い。


 在原さんはともかく深夜に運転を頑張ってくれた先生はもう少し寝かせてあげたいものだが、ここで立ち止まっていると今後の予定に響く。早めに起こさないとな。


「おはよう、蘭原さん。寝起きでごめんなんだけど在原さん起こすの任せていい? 俺の方は先生起こすから」


「は、はい。分かりましたっ」


「んにゅぅ。もう少し寝ようよぉ〜。いっぱいぎゅっ、しながら二度寝しよ? 私と堕落しよ?」


「お前は早く目ぇ覚ませっ」


「いでっ! わあぁんっ!! ひなちゃん、ゆーしがぶった!! お母さんにもぶたれたことないのに!! あ、でもこれってある意味私の初めてを一つゆーしにあげることができたってこと? えへへ、それはそれで……」


「よし起きたな。じゃ、ここで待ってろ」


 俺は由那の腕を解き一度外に出てから、運転席の扉を開ける。


 同じようにして蘭原さんも助手席の扉を引くと、在原さんの身体をゆすった。


「ぐがごぉっ。メ◯ウスぅ……ア◯スピキ◯メルハイ◯イトぉ……ぐごっ」


「なんて寝言してんだこの人……。あの、先生? アラーム鳴ってるんでそろそろ起きてください。タバコの銘柄唱えてる場合じゃないです」


「んんぅ、なんだよぉ。……って、おお神沢。もう朝かぁ?」


「そうですよ。てかマジでどんな夢見てたんですか。寝言の内容がめちゃくちゃハードでしたけど」 


「ん〜〜っ! なんか何本吸ってもすぐに補充してくれる旦那さんとイチャイチャしてた気がするなぁ。私の好きな銘柄完全把握してる最高の人だった……」


 クズだ。クズ過ぎる。見てる夢の内容がもう何から何までクズの典型すぎてもはや苦笑いを浮かべることしかできなかった。


 ま、まあ起きてくれたからとりあえずいいか。そういえば在原さんの方は……


「にへっ。良い女がいるぅ。よーしよしよし。今日からお前は私の抱き枕だぁ……」


「はわっ!? か、かか神沢さん! どうしましょう……私、幸せすぎてこのまま薫さんの抱き枕になっちゃうかもしれません……っ!! へへ、へへへっ。薫しゃんの良い匂いがしゅるぅ」


「……」


 そうか、そうだったな。




────問題児は二人だけじゃなくて三人だった。

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