274話 よふかし二人組2
274話 よふかし二人組2
「ん、ん〜っ! おまたせ寛司ぃ」
「お帰り。はい、これお茶」
「ありがとぉ。……って、前にもこんなことあった気がする」
「あ〜、あれかな。校外学習の時の」
そう言えばあの時もパーキングエリアに行って、こうやって有美のためのあったかいお茶を冷ましておいたっけ。
懐かしいな。あれからもう数ヶ月が経ってる。最近ずっと有美と一緒にいれて幸せなせいで体感速度が急激に早くなってきている気がするから、このままだと高校生活もあっという間に終わってしまいそうだ。
「んっ……相変わらずちょうどいい温度してる。ありがと」
もうすっかり夏とはいえまだ朝方は少し冷える。やっぱり温かいお茶にしておいて正解だったなと思いつつ、二人でそれを啜ってパーキングエリアの中へと踏み込んだ。
中にはお土産屋さん、内蔵されたコンビニ、そしてフードコート。
「ね、ねぇ寛司。その……ね。ちょっとだけ小腹が空いたり、してない?」
「え? あ〜、うん。そうだね────」
きゅるるるるっ。
「あぅっ!?」
隣から可愛い腹の虫が鳴き声を上げる。
どうやら少しまわりくどい言い方をしたのは単にお腹が空いたというのが恥ずかしかったかららしい。
かああ、と顔も真っ赤にしながら「今の聞こえた!?」とでも言わんばかりに羞恥の表情を向けてくる。はい、聞こえてました。聞こえちゃいましたとも。
まあ、俺も少しお腹が空いていて元々何かを食べるつもりではいたし。行き先はこれで決まりかな。
「ごはん食べよっか。フードコートみたいなところにお店あるみたいだし」
「……ん」
お店の前の券売機でメニューを眺める。
メニューはかなり多い。和・洋・中と全てのジャンルの一番王道的なところはしっかりと押さえていて、まさにパーキングエリアのフードコートといったところ。
「有美はどれにするの? お腹空いてるなら遠慮せずに一品物も頼んでね」
「く、食いしん坊みたいに言わないで。あっ、これ美味しそう……」
「どれどれ?」
有美が視線を惹きつけられた先にあったものは、「肉玉うどん」。前に一度うどん屋さんで同じようなものを食べたことがあるけれど、若干甘めの味付けに、身体を芯から温めてくれる出汁。卵とお肉が絡み合ってできる満足感はかなりのものだった気がする。
「いいね、美味しそう。それにしたら?」
「寛司はどうするの? お腹空いてない?」
「え、俺? 俺は……どうしようかな。あんまりガッツリって感じではないからおにぎりとかかな?」
「あっ! ならこれ半分こしよ! 多分おにぎりともよく合うと思うし!」
「いいの? 半分だけで足りる?」
「私が寛司と半分こしたいからいいのっ。それにどうせまたこれとは別で朝ごはんもあるだろうし。たった数時間の話だから」
「そっか。じゃあお言葉に甘えようかな」
そうして二人でおにぎり二つ、肉玉うどん一つを頼んで。冷たいお水をセルフサービスのところから持ってきて腰を下ろす。
当然のように有美はソファー席で俺の隣に座った。肩と肩が触れ合うくらいまで近くまで身を寄せてくると、俺の左手の上にそっと手を乗せてくる。
「……何?」
「いや、なんでも」
もはや無意識なのか。
有美の甘えんぼが、急成長を続けている。




