269話 深夜のパーキングエリア2
269話 深夜のパーキングエリア2
「くあぁ。ゆーしぃ〜」
「おかえり。その様子だとちゃんと間に合ったみたいでよかった」
「全く、私も個室の前で待ってて気が気じゃなかったんだからな」
「でへへぇ。ごめんなしゃい」
スッキリした顔で出てきた由那は、まだ眠そうにしながらも完全に目を覚ましたようだった。
そして、在原さんと一緒に戻って来ると。
ぐうぅぅぅぅ。と。大きな腹の音を立て、何かを訴えるように俺を見た。
「お腹空いたぁ。ゆーし、何か食べ物持ってない?」
「いや持ってるわけないだろ」
水くらいならペットボトルに入ったやつがあるが、流石に食べ物となるとな。夜ご飯を食べてから集まったわけだし、車内で食べる用の物なんて何も持ってきていなかった。
こんな深夜にお腹が空いたと言い出すなんて。そういえば最近夜遅くにお腹が空いたと言ってたまに一緒にコンビニへ食べ物を買いに行くこともあったが、そういうのが影響してしまっていたりするのだろうか。この間ダイエット的なことを決意したばかりだというのになんとも不甲斐ない。
「ちょいちょい、お二人さんや。ここがどこか忘れてないかい?」
「「へ?」」
そうやってどうしたものかと考えていると、横から由那の肩を在原さんがちょんちょんつついて。ニヤッ、と何やら企んでいる時の顔をすると、右手でトイレの横にある建物を指差す。
「ここはパーキングエリアだぞ? つまり、二十四時間営業だ。お腹が空いたならここで深夜飯なんてどうだい?」
「っ!? ご、ご飯食べられるの!?」
「勿論よ! それもこういうところのフードコートってのは意外と飯の種類が多い。いろんな食いもんが選び放題だ!!」
「は〜い! はいはいっ!! 行きた〜い!!」
「っし決まりだな! さあ神沢君も! いざ魅惑の深夜飯じゃー!!」
「えぇ……。ちょ、二人とも速っ!?」
あっという間に自動ドアの向こうへ二人が消えていき、俺はすぐにその後を追いかける。
中に入ると、煌々と灯りの付いた店内では何人かの人が食事を取っていた。
パーキングエリアらしくコンビニやお土産屋さんも内蔵されているなか、その奥で。フードコート化していたそこには数多くの席と、逆にたった二つのお店が構えられている。
食事をしている人は中年男性。身なりから見て、トラック運転手の人か何かだろうか。確かにああいう人達は深夜にも仕事をするだろうし、こうやって休息も兼ねてパーキングエリアで食事をとってもおかしくはない。むしろ、この時間帯であれば俺たち高校生の方が浮いているな。まあ浮くという雰囲気が感じられるほどの人の多さではないんだけども。
「ゆーし、こっちこっち! 見て! いっぱいメニューあるよ〜!!」
そんなことを考えながら進むと、その先では二人が食券を買うための券売機とその上のメニュー写真を眺めていた。
店自体はたったの二店舗しかない。が、やはり流石はパーキングエリアというべきか。カレーやチャーハンなどのご飯ものから、ラーメンやうどんなどの麺。その他にもポテトやハンバーガーのジャンクフードまで、数多くのジャンルを広く浅くといった感じで取り扱っているようだ。
これにはついつい目移りしてしまう。こんなものを見せられると俺までお腹が空いてきているような感覚に襲われて、あっという間に小さくお腹が鳴った。
「ゆーしも一緒に食べよ? ほら、こっち来て!」
「お、おぅ……」
まあ、ガッツリ食べるわけじゃないし。軽食くらいならいいか。




