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253話 親友とショッピング7

253話 親友とショッピング7



 ポシュンッ。何の音とは形容し難い、小さく軽い音が鳴る。


 音源は有美の手に握られているスマホ。そしてその音とはズバリ、LIMEにて画像とメッセージを送った時のものである。


「お、送っちゃった。ねえ本当に大丈夫なの!? これで本当に!?」


「だ〜からぁ〜。大丈夫だってば。って、お! 既読ついたな。さすが渡辺君。彼女からのLIMEには即レスかぁ!!」


 送信先は当然のごとく渡辺君である。


 ちなみにこれが私のしたかったこと。私以外の声を発することができる人物の正体。


 男ウケというのは、どれだけその服のことを女子から褒められたとしても自信を持ちづらいものだ。女からのウケではなく男からのウケの話なのだから、当然である。


 つまり手っ取り早く今の衣装に自信を持たせるには、男からの声を聞くのが一番早い。その中でも有美が自分の格好を褒められたい相手なんて一人しかいないわけで。


『これ、今薫に選んでもらった服なんだけど。どう……?』


『画像を送信しました』


『何これ。死ぬほど可愛い』


「しっ!?」


「にっしし。言ったろぉ?」


 かあぁっ。一瞬にしてただでさえ紅潮がちだった有美の顔が、茹蛸のように真っ赤に染まっていく。


『いつものスカートもいいけど、有美はスタイルいいからやっぱりズボンもよく似合うね。買うか悩んでるの?』


『う、うん。あんまり女の子っぽくないかなって……』


『俺はそうは思わないけどな。こういうシンプルな服装は元が可愛くないと着こなせないし。身体の線が細くて脚も長い有美にはこの格好、めちゃくちゃ良いと思うよ』


 流石は渡辺君。きっと今有美が欲しいであろう言葉をここまでノータイムで伝えることができるなんて。


 どうやら効果はあったようで、有美は少しドギマギとしながらも。どこか嬉しそうに画面を見つめていた。


『そっか。じゃあ買うね』


『うん。明日その服装の有美に会えると思うと、凄く楽しみだよ』


「おや? おやおやおやぁ? 明日はデートですかにゃ〜?」


「う、うるさい! 画面見るなっ!!」


『ありがと。明日、着て行くね……』


 有美が頬を緩ませながら私に隠してそうメッセージを打つと、最後に渡辺君からOKのスタンプが帰ってきて。それと共にスマホの電源スイッチが押されると、画面は真っ暗に戻る。


 ぐふふ至近距離で中々いいものを見れた。やっぱり恋する乙女の赤面は万病に効くな。摂りすぎには注意だが、糖分には人を幸せにする力が秘められている。


 渡辺君を頼ってよかった、と。心からそう思った。


「……えへへ」


「ま、よかったな。てかこれ勝負するまでもなく私の勝ちじゃね?」


「なっ!? ちょ、ちょっと待ってよ。私だって薫に似合いそうなの、いっぱい選んできたのに!」


「私はもう満足したぞ?」


「私はしてないの!! た、確かに寛司にも褒めてもらえたし、ちょっとこの格好いいかもって、思ってきたけど……じゃなくて! せっかく選んだんだから着てよ!!」


「ったく、しゃあねえなぁ。ちゃんと安いのにしてくれたんだろうな?」


「薫がワガママだからちゃんと三千円以内に抑えたってば。安くて似合いそうな服探すの、意外と大変だったんだよ……?」


 う゛っ。なんだその目は。


 ジト目で見つめられ、私は思わず視線を逸らす。


「……逃がさないから」


「は、はは……」




 着せ替え人形タイム、スタートである。

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