251話 親友とショッピング5
251話 親友とショッピング5
分かってはいたことなのだが、有美が見たいのは主にファッション系らしい。
なんでもアウトレット的なあれでめちゃくちゃ安い店があるんだとか。しかもその規模は地域最大級。行くしかないだろう、ということで。
「見て薫、夏服もいっぱいある! しかもどれもこれも安い!! へへ、来てよかったぁ……」
「おま、抹茶飲んでた時より良い顔するじゃねえか。いや、いいんだけどさ」
私も一応、ファッションに興味が無いわけではない。
まあ中身がこんなでも一応女だし。オシャレだったり可愛かったりな服に憧れくらいはある。
ただなぁ。服にお金をかけるという感覚がどうも合わない。多分普通の女子高校生なら一着五千円から一万円あたりが相場だろうが、私の場合は三千円を超えると高いと感じてしまう。
だからデザインの気に入った服があっても基本的に買わないし、いつもそこらへんの安い店で適当に見繕ってコーディネートしてる感じだ。ま、顔がいいからなんやかんやでそれなりになるんだけども。
それに比べて有美はキチンとオシャレをしている。その上私と同等かそれ以上に顔が良いと来た。渡辺君はさぞかし鼻が高いだろうな……って、それは有美にとっても同じ話か。
「せっかくだから薫も色々着てみてよ。服、全然バリエーション無いよね?」
「う゛っ。な、なんのことだか……」
「ほら、私が一緒に選んであげるから! 薫は可愛くてオマケにスタイルまでいいんだから、なんでも似合うって!」
「……そうか?」
コイツ、人を褒めるのが上手いな。いや、本心か? なんかこう、私を連れて行くために放った方便って感じがしないし。照れるなオイ……。
「はいはい、分かったよ。けど高い服は無理だからな? 予算は一着三千円までだ」
「ふふっ、大丈夫。ここはアウトレットだよ? それくらいの値段な服はゴロゴロある!」
やる気充分、といった様子で有美は気合を入れている。
そんな気張らなくてもいいんだけどなと思いつつも、心地のいい言葉で褒められたものだから私も気づけば乗り気になってしまっていて。
ハンガーでズラリと並べられているものや、ワゴンに処分品として突っ込まれているもの。多種多様な、時にはメンズの服にも触れながら。自分に似合いそうなものと有美に似合いそうなものを物色した。
「オイ有美、せっかくだから相手に似合いそうな服何個か見繕ってコーディネートってのはどうだ?」
「ふふん。薫に服なんて選べるの?」
「失敬な。私だって一端の乙女だぞ。クッソ可愛い……それこそ渡辺君がキュンキュンときめく服を選んでやらぁ!!」
「か、寛司がキュンキュン!? ほ、本当に……?」
よし、ちょっとした勝負だ。
どちらが相手により似合う服を選べるか。有美がどういう路線で来るのか分からないが、私はとにかく男ウケ狙い一筋で行く。
変に可愛すぎず、それでいてオシャレな部分を残すような。有美の綺麗で長い黒髪が映えるようにというのも意識しておきたい。
……というか、正直全体像はもう出来上がりつつある。私がお前を最高にイカした奴にしてやるよ!
最近見たアニメのイケおじが言っていた台詞を脳内再生しつつ。私は早速有美から離れて服を探す旅に出かける。
向こうは向こうで何か考えがありそうな予感がするし。こっちも気合を入れて望まないとな。




