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248話 親友とショッピング2

248話 親友とショッピング2



「おえぇ……う゛っ」


「ちょっと。この距離歩いただけでそれってどんだけなのよ……」


「うる、さいっ。私……には……っ。ただでさえ、デカいのが付いてんだッ。お前には、この苦しみは分から……いでっ! いででででで!!!」


 こめかみにアイアンクローをくらい、私はモール寸前の公園でノックアウトされる。


 やっぱりこんな暑さの中出歩く方が間違いだったんだ。前に日帰り旅行に行った時とは訳が違う。この炎天下の中歩くなんて、本当バカのやることだろ。


「たまには運動しなさいよ。長距離走だっていつも最下位位だったし」


「だ、からぁ! 走らなくても移動手段が山ほどあるこの現代でなんで自分の足を使うんだよ! せめて、自転車だろぉ……っ!!」


 クソ、コイツ運動ができるからって良い気になりやがって。


 私はずっと部屋に引き篭もっていたいんだ。クーラーをガンガンに効かせた部屋でゲームができればそれでいいんだ。そりゃあ、女の水着とかそういうイベントがある場所なら別だけども。ただショッピングモールに行くだけというからわざわざ外に出たのに。


 こんな地獄を味合わされるなんて思ってもみなかった。もう全身汗でべっしょりだ。今すぐタクシーを拾って帰りたい……。


「そんな事ばっかり言ってるからそうなるんだっての。というか昔より更に動けなくなってない? さては太った?」


「はっ! 私は太らない体質なんだっての。変わったのはカップ数だけだバカ野郎」


「ぬぐっ。不平等……」


 そうだ。私は運動なんかしなくても生きていける。少なくとも体型の維持は余裕でできてるし。確かに長距離走は数百メートルもできないし、腹筋や腕立て伏せは一回もできない。


 でも私は女の子だ。運動部に入っているわけでもないし、する必要がないから努力もしなかっただけ。それによる弊害なんてせいぜい体育の成績が壊滅してることくらいだし。全くもって問題ない。そう、全くもってだ。


 というかコイツの方がおかしいんじゃないのか。なんでこの炎天下の中十分以上も歩いて息切れの一つも起こさない。おっぱいが無いだけでそこまで運動するのが楽になるものなのか……?


「ねえ、今めちゃくちゃ失礼なこと考えてるでしょ」


「は、はは。まっさかぁ……」


「目を見ていいなさい。さっきから視線がおかしなところ向いてるのよ」


「気のせい……気のせいですよ。別に私は胸部なんてこれっぽっちも見てませ……お、おい待て! アイアンクローはやめろってマジで! それ頭から変な音がするんだよぉ!!」


 マズい。有美の貧相なものを見ていたことがバレた。無言で近づいてきてアイアンクローの構えというのは流石に怖すぎる。


 レスバ最弱の有美だ。いつもなら渡辺君の名前を出したりして簡単に切り抜けられるのに。もう暑すぎて頭が回らない。どうする、あれを喰らうのだけはマズいぞ。そろそろ頭から血管の切れる音がしてもおかしくない。


「覚悟は、いい?」


「ひいいいぃぃっ!? んぬぉ、ステイ! ステイだ有美! お前のそれマジで痛いから!! ふぁっ────!?」


「ふふっ、なーんてね」


「へ……?」


 ぴとっ。頬に冷たい感触が走る。


 何かを当てられた。そう思いゆっくり視線を横にやると、そこには水の入ったペットボトルが。じわじわと私の身体から熱を奪っていくそれは、さながら今の私にはただの水以上の価値を有している。


「キンッキンに……冷えてやがる……」


「ほら、これ飲んでもうひと頑張りして。モールの中は涼しいはずだから」


「ひゃ、ひゃひ……」


 貰った水を口いっぱいに含み、喉に通す。


 するとほんの少しだけ元気が戻って、足が軽くなった。これならなんとかもう少し歩けそうだ。


「弱ってる薫、なんか新鮮だね。あの薫がぜえぜえ言いながらふらふらになってるなんて」


「う、うるせぇ……よし、行くぞ! いざクーラーガンガンのモールへ!!」


「はいはい。飛ばしすぎて目の前で倒れないでね」


 喉を潤し、一時的に体力を回復させて。




 さっきまでより圧倒的に速い足取りで、モールへと向かった。

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