247話 親友とショッピング1
247話 親友とショッピング1
夏休みに入って一週間ほどが経過した、ある日。
「お待たせ、薫。アンタの方が先に着いてるなんて珍しいじゃん」
「おいおい、まるで人を遅刻魔みたいに」
「違うの?」
「……」
私は有美に誘われ、駅に来ていた。
なんでも最近できたショッピングモールが三駅先にあるらしく。せっかくだから二人で見に行ってみないかと。
思えばこうやって二人きりなのは結構久しぶりな気がする。有美は最近渡辺君にべったりだし。やっぱり前のように二人きりで遊ぶ機会は格段に減ったな。まあ全然仕方のないことだけど。
「にしても、私だけを誘うなんて珍しいな? 最近は渡辺君もいるか、由那ちゃん達みんな誘って全員で行動するかの方が多かったのに」
「ん゛っ……べ、別にいいでしょ。たまにはこうやって二人も……」
ん? おやおやおや? なんだね有美、その微かな赤面は。
はは〜ん、さてはコイツ。そういうことか?
「もしかして夏休みに入ってから一度も会えなくて、寂しかったのか?」
「は、はぁ!? そ、そそそんなわけないでしょ!? 寂しいなんて……絶対ない!!」
「ふっふっふ。全力で否定されるとむしろ余計に怪しく感じるなぁ。ったく、そうならそうと素直に言えばいいのによぉ。モールなんて口実作って遠回しになんて────」
「うるさい! マジでうるさいから!! ほら、早く行くよ!!」
「へいへ〜いっ」
親友の可愛らしい嫉妬にキュンとしつつ。一緒に電車へと乗る。
いくら夏休み期間とはいえ所詮は平日の昼間。人は少なく、ゆったりと並んで座ることができた。
「うへぇ、電車の中涼しい……。ったくマジで日本にはなんで夏なんて季節があるのかね。春秋冬の三つがあれば充分だろうよ」
「もしかして薫、またずっと家でゲームしてるの? たまには外に出たらいいのに」
「hahaha。それは私に死ねってことか?」
「はぁ……」
「オイ待て。なんだその諦めたみたいなため息は。別に出る必要がないから出てなかっただけだぞ! それにほら、実際今日だって外出てるだろ!!」
「駅まで歩いて数分のくせに。しかも待ち合わせ室でガッツリ涼んでた奴が何を言ってんだか……」
仕方ないだろう。私はインドア派なんだ。馬鹿みたいにやれアスレチックだの海だのに行く奴らとは違う。……いや、やっぱり海は別か。可愛い女達の水着が見られるのなら悪くないかもしれない。
電車に揺られながら、のんびりと他愛もない話をして。ほんの十数分で目的地の最寄駅に着くと、有美は言う。
「本当はここからモールまで徒歩十五分くらいあるからバスのつもりだったけど。やっぱりやめで。薫、たまには歩きなさい」
「そ、そんな殺生な!? 文明の利器には頼るもんだろ!? なあ、歩きなんて前時代的な移動方法は取るべきじゃない! 汗だって掻きたくないし!!」
「うるさい引きこもり。ほら、歩こ」
「い〜や〜だ〜!! いいのか親友がのたれ死んでも!! この人でなし!!!」
「今日はそんなに暑くないってば。ったく……本当昔から変わらないわよね、アンタは……」
「ちょっ、マジで置いていく気か!? くそぅ、あとで覚えてろよっ!!」
私の意見を一ミリも取り入れずさっさと歩き出してしまった有美のあとを、必死についていく。
駅構内を出るとムワッと熱気が身体を包み始めて。目の前にバス停があるのに私の手を引っ張って無理やりスルーさせた親友と共に、モールへの道のりを歩く。
灼熱地獄だ……。




