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244話 夜のイチャイチャ3

244話 夜のイチャイチャ3



 無抵抗に、ただひたすら頭を撫でられる。


 心がぽわっと暖かくなっていくと、次第に瞼が重く。さっきの二時間映画の影響もあってか、少しずつ視界が薄れていくのを感じていた。


「これ、ヤバいな。めちゃくちゃ眠くなってきた……」


「え〜? もぉ、まだ寝ちゃダメだよ? 寝る時は二人でぎゅっ、しながら一緒に寝るって決めてるんだもん!」


 いやぁ、それはそれで中々どうして魅力的なんだけども。というかまあ絶対夜はそうやって寝ることになるんだろうなと思っていたし。


 ただとにかくこの膝枕は睡眠導入性能が高すぎる。本当に気を抜いたらこのまま寝てしまいそうだ。


「ふふっ、私にいつも甘えんぼだって言うけどさ。実はゆーしも結構だよね?」


「んなバカな。いくらなんでも……」


「じゃあ独占欲が強い彼氏さん、かな? さっきだってほら。おばさんに私を取られそうになっていっぱい嫉妬してくれたし」


「……」


 それはまあ、確かに。あの時は母さんがやけに由那にベタベタするもんだから嫉妬したけども。けど流石に由那に言われたくはないな……。


「あ、あれは母さんが露骨に調子乗ってたからな。お灸を据えたかっただけだ」


「えへへ、じゃあそういうことにしとこっか」


 嬉しそうだなコイツ。


 けど、確かにさっきの嫉妬はちょっとみっともなかったかもしれない。由那が母さんに盗られることなど絶対にないと分かっているのに。分かった上で、それでも目の前で由那が俺以外に撫でられて気持ちよさそうにしているのを見たくなかった。


 そんな様を人は″独占欲が強い″と言うのだろうか。それなら確かに俺が当てはまってしまうのを認めなければならない。特に最近ではどんどん由那と過ごす時間が増えて、少しの時間でも離れるのが嫌になりつつあるし。


「ん……」


 そんなことを考えていると。急速に眠気が膨らんでいき、身体を熱という火照りで埋め尽くしていく。


 夜ご飯を食べお腹いっぱいになってから見た映画。その後太ももという極上の枕に頭を乗せて寝転がっているという状況。


 どうやら身体が限界を迎えたらしい。視界だけでなく、少しずつ意識も朦朧としてきた。


「ゆーし、おねむ? 寝ちゃいそうだね」


「そう、だな。そろそろマジでヤバいかも……」


「じゃあそろそろお布団イチャイチャタイム、始めちゃおっか。歯磨きとかやらなきゃいけないことは全部済ましてあるし、お布団ぎゅっぎゅしながら幸せ寝落ちしよ?」


「うーん……」


 ほら早く立って、と。無理やり身体を起こすと、彼女は畳んであった布団を手際良く広げ、あっという間に就寝の形を整える。


 そして俺より一足先に潜り込んでから右手で布団をゆっくりと開いて。俺をぬくぬく天国に誘う。


「いっぱい……いっぱいぎゅっ、しようね♡」


 世界一可愛い「彼女さん布団」は、どれだけ気持ちがいいのだろう。


 二人で抱き合い身を寄せ合って、体温でぽかぽかになったお布団の中で気絶するようにぐっすりと眠る。


 まさに夢のような環境。眠気がマックスで足取りすら怪しくなり始めた俺にとってそれは、あまりに魅力的な提案で。




 簡単に、そして短絡的に。欲望に身を任せ、夢の世界へと入国したのだった。

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