243話 夜のイチャイチャ2
243話 夜のイチャイチャ2
「いいんだな? 俺もしてもらって」
「い〜よ〜。おいでっ♡」
腕を広げながらそう言う由那の膝は、ベッドの脇から下ろされている。
彼女を膝枕で散々甘やかしてしばらく。そろそろ午後の十時を回ろうかという頃に俺の番はやってきた。
いつも俺は甘やかす側で、由那は甘やかされる側。この序列は中々どうして覆ることが少ないが。今日は珍しく交代してくれるらしい。
「じゃあまあ……お言葉に甘えて」
「は〜いっ。彼氏さん一名ご案内〜」
魅惑の素足が俺の視線を絡めとる。
夏が本格化してきたこともあり、今の由那はいつもの寝巻きであるもこもこジャージではない。
半袖シャツに生地の薄い上着を羽織り、下はホットパンツ。太ももの真ん中にも満たない裾の短さのせいで、その綺麗で真っ白な脚はスラリと全貌を見せていた。
細くて、程よく長くて。それでいて目で見ただけでも分かるほどの肌のハリツヤに、自重で少しだけ形を変えている太ももの柔らかさ。
うん。これはダメなやつだ。絶対抜け出せなくなるやつだ。
わかっていても俺が止まることはない。母性モードがオンになった全肯定彼女さんに誘われては、逃げ出せるはずもないのだ。
「お、おぉ……っ」
もにゅ。
頬に柔肌が触れると、まるで低反発枕のようにフィットする。
そしてふわりと鼻腔をくすぐる甘い匂いに、上を見ると由那の顔が半分も見えなくなるほどの強大な山。
ここは楽園か。男の欲望というやつが詰め込まれ過ぎている。由那と一緒にいるとたまに「こんなに幸せでいいのか」と思うことがあるが、これはそんな感情の最高峰を誘発させるほどの幸せホルモンを孕んでいる。
「ふふっ、くすぐったい。ゆーしの髪の毛が太ももチクチクしてくる〜」
「ご、ごめん」
「いいよぉ。えっへへ、それにしてもこうやって直接肌が触れる膝枕は初めてだね。お加減はいかがですか?」
「っ……最高に決まってるだろ」
「ほんと? 私の太もも、世界一大好きな彼氏さんにお墨付き貰っちゃった♪」
俺の頭に、そっと由那の手が触れる。
何度か毛先を流すようにしてから、次は頬へ。ゆっくり、ゆっくりと頭のてっぺんから顔まわりを撫でられていくと、思わず力を抜き過ぎて情けない声が出そうになる。コイツが撫でられて猫撫で声を出している時の感覚は、こんな感じだったのか……。
「ゆーし、顔緩んでるよ? そんなに私の太もも枕が気持ちいいのかにゃ〜?」
「う、うるさいな。柔らかさがちょうどいいんだよ。というかお前だってついさっきまでごろにゃんごろにゃん言ってゆるゆるだったろうに」
「ふふっ、さっきはさっき、今は今だもん。ほら〜、なでなで〜っ♡」
変な感覚だ。いつも甘やかしてる相手な由那に、今はこうして全てを掌握されているなんて。
なでなで、なでなでなでなで。すりすり、なでなで。なでなでなで。
ああでも、クソ。マジで身体の力が抜ける。
由那の太ももを枕にできるなんて最高だ、ヨシ! と。そんな感じで即決し自ら進んでこの状況に足を踏み入れてしまったわけだけど。
俺はもしかしたら、底の無い泥沼に浸かってしまったのかもしれない……。




