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241話 君の匂いを2

241話 君の匂いを2



「同じ、匂い……?」


 これには流石の母さんもきょとんと目を丸くしている。


 俺と同じ匂いを身体につけたくて。……うん、何回脳内で復唱しても紛うことなき爆弾発言だ。


「せ、せせせっかくゆーしのお家にお泊まりできるから、その……ゆーしが普段使ってるボディーソープ、使いたくなっちゃって……!」


「おぅふ……」


 どうしよう。めちゃくちゃ恥ずかしい。


 いや由那に任せたのは俺だし、なんならこれ誤魔化しとしては百点満点の可能性すらあるけども。にしても隣で聞かされると羞恥心で顔から火が出そうだ。


 もはや一緒にお風呂に入ったと白状するのとさほど変わらない精神ダメージを受けたんじゃないかと思いつつも。それは発言者の由那も同じなようで、顔を真っ赤にして喋っていた。


 そしてそれを聞いた母さんはというと────


「えぇ〜、んもぉ! なにそれ可愛すぎィ!! 私の息子愛されてるなぁ〜!!」


「え、えへへ、愛してるだなんて……」


 大変ご満悦であった。


 ただでさえ由那に心酔しており、何度も可愛い可愛いと隙さえあればよしよしするほどな人だ。そんな子が息子のことをそこまで言ってくれたのが相当嬉しかったのだろう。さっきまでのような揶揄い気味な笑みは消え、ピンク色のオーラと共に身悶えている。息子としては中々見ていてキツイものがある。


 が、とりあえず誤魔化しは効いたようだ。


「ほんと由那ちゃんはいい子だぁ。ほら、よしよししてあげるからこっち来なさい!」


「オイ、食べ終わってからにしろ食べ終わってからに。まだ食事中だぞー」


「あーっ! 勇士妬いてる! 由那ちゃん盗られるかもって不安なんだ〜!」


「あ゛ぁ?」


 ピキッ。眉間に皺がより、絶妙にウザい言い方をしてくる母さんに対してストレス数値が上昇する。


「うるせぇ。由那をよしよししていいのは俺だけだ。いい加減息子の彼女にちょっかいかけるのやめろ」


「へぇっ!? ちょ、ゆーし!?」


 コイツ、いつもいつも俺の由那の頭を何度も撫でやがって。


 確かに由那が可愛いのは分かる。なでなでしたくなるような愛らしさ、小動物らしさを兼ね備えているのも日々理解させられてる。


 けど、そう何度も何度も母さんに由那を取られてたまるか。調子に乗らせるとそのうちずっと膝の上に置いたりしかねないからな。ちゃんと言っておかないと。


「むっ。息子の彼氏は同時に私の娘でもあるでしょ!? 独り占めはズルい!!」


「由那が母さんの娘なわけないだろ。いいか、由那は俺のだ。俺の彼女さんなんだぞ」


「わ、私はゆーしのもの……へへっ、えへへ……いや、そうじゃなくて! ケンカはやめてぇ! わ、私おばさんになでなでされるの好きだよ!?」


「由那ちゃぁ〜ん! そうだよね? よぉし、じゃあおばさん頑張っていっぱいなでなでして────」


「だから待てって。由那、そうやって母さんを甘やかすとすぐ調子に乗るぞ。たまには断ってくれ。その分俺がいくらでも付き合うから」


「い、いくらでも!?」


 全く、由那も由那だ。いつもいつも母さんにいいように撫でられやがって。しかも本当に嬉しそうにしてるし……。


 そりゃあ他の男とかに撫でられた訳じゃないし。母さんは由那目線からすればただの彼氏のお母さんってだけだからまったく抵抗は無いのかもしれないけどな。いくら母さん相手だからって、やられっぱなしじゃ俺だって嫉妬する。


「ゆ、ゆーしがいっぱいなでなでしてくれるの? 私が甘えたい時いつでも? いくらでも……?」


「当たり前だろ。なんなら今すぐにだって」


「そ、そっか。じゃあおばさん……ごめんなさい」


「そんなぁ!?」


 では早速、と。頭を差し出してくる由那を引き寄せて、ゆっくりとなでなでを始める。


 いつもは振り回されてばかりで、昔からずっと言い返しの一つもできずに手のひらの上で転がされている気がしていたけれど。


「う゛ぅ……う゛う゛ぅ〜!!」


「えっへへ、ゆーしのなでなで……やっぱりしゅきぃ……」


「ふんっ」




 初めて、母さんに完全勝利できた気がした。

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