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237話 二人きりでポカポカお風呂6

237話 二人きりでポカポカお風呂6



 ドクンッ。自分の中の何かが滾り、湧き上がるような音がした。


 純白で何の跡もない綺麗な首元。それを見つめながら俺は思ってしまう。


(キス、マーク……)


 由那が俺は彼女のものだとマーキングするためにつけた首元のキスマーク。


 俺はそれに対して「そんなことをしなくても俺はずっと隣にいる」と。そう言った。その時はまだこの行為に対してそこまでの魅力を感じていなかったからだ。


 けど、いざ対峙してみると分かる。


 由那に……お前は俺のものだと。そう証を刻み付けたい。そんな気持ちが昂って仕方がなかった。


「ゆーし、そんなに私の匂いくんくんするの気に入っちゃったの? というか元々……結構好きだったり?」


「ああ、そうだよ。由那が俺の匂いをすぐ嗅ぐのと同じくらい、俺も嗅いでた」


「へっ!? そ、そっか。えへへ……」


 整えられた毛先が、彼女の言葉と共に右左へと小さく揺れる。そしてその度に顔を出すうなじに、俺は己の欲望をさらに湧き立たられて。そろそろ我慢の限界を感じ始めている。


 というか、悪いのは由那の方だ。キスマークをつけるという新しい愛情表現の仕方を俺に教えたばかりでなく、一緒にお風呂に入ることでこうやって首元を見せつけてくるなんて。その上俺からシてもらうことに関しては、全く拒否感を覚えていないどころか。むしろつけて欲しいと誘ってくる始末なのだから。


 そう、これは合法だ。俺は誘われたから答えただけ。さっきのような事件性のあるアクシデントと違い、今回ばかりは素直に行っていいはず。


「なあ、由那。したいことあるんだけど……いいか?」


「? なぁに?」


「ちょっと後ろ髪、上げてくれ」


「……う、うん。いいけど」


 俺の言われた通りに両手を使い、由那は後ろ髪を軽く持ち上げる。


 うなじ全域が明らかになると改めてその綺麗さに心臓を揺すられてしまうが、もうそうそう簡単に止まれるものではない。少しの尻込みもすることなく、手を動かす。


「ひぅ!? な、なに……?」


 首をそっと手でなぞると、ビクンッ、と小さく震えて全身が反応する。一瞬逃げようという素振りを見せた気がしたので更に強く身体を引き寄せると、背徳感も相まって更に心臓の音が加速した。


「にゃん、でっ。首筋……触るのぉ? 手つき、なんだかえっちだよぉ」


「いや、ごめん。あんまり綺麗だったからつい。まあやりたかったことっていうのはこんな手で撫でるだけのことじゃないんだけどな」


「へ? そ、そうなんだ。じゃあ何、してくれるの?」


「何……か。そうだな。由那が俺のものだって、誰が見ても分かる証をつける行為だな」


「っ!? それって────ん゛んにゃ!?」


 直接的にこれからすることを説明することもなく。由那の了承を一切えない形での不意打ち。なんの警戒もしてこない彼女の背後から、どこか襲っているかのような気持ちになりながら。




 俺は真っ白な彼女の肌に唇を重ねて。そっと、そして力強く。吸い付いたのだった。

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