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230話 圧倒的痴話喧嘩1

230話 圧倒的痴話喧嘩1



「いや、いやいやいやいや! 流石に! 流石にだって!!」


「や〜だ〜! ゆーしとお風呂入るのぉ〜!!」


 駄々っ子モードに突入してしまった由那は俺の服の袖を掴むと、グイグイと引っ張って離してくれない。


 けどそんなこと言われたって。水着着用でそれも俺専用のあの水着を着てくれるからって。いくらなんでも一緒にお風呂というのはまだ心の準備が足りていない。


 そりゃ幼なじみだし、一緒にお風呂に入った事がない訳じゃない。もうあまり覚えていないけれど小さい頃はよく入っていた気がする。それにこの前温泉旅行に行った時だって水着着用とはいえ一緒に入りはしたけども。


 今回はシチュエーションが違いすぎる。見ているだけでおかしくなってしまいそうに魅力的なあの水着を着た由那と、我が家の狭いお風呂で二人きり。きっと最終的にはシャワーを浴びるだけではなく、湯船にも浸かることになるだろう。


 うちの湯船の大きさはせいぜい、俺が脚を伸ばして入るとピッタリくらいのサイズだ。もしあの姿の由那と密着して一緒に入るなんてことになったら────


(想像しただけで……ヤバい)


 何より周りに誰もおらず、俺たち二人で狭い密室にというのが一番不味い。由那が遠慮なく責めてくるのはもちろんのこと、俺まで″誰かに見られるかもしれない″というストッパーが外れかねないのだ。


 一応この家には母さんもいるものの。よっぽど疲れているようで今日は一日中部屋でごろごろをキメるそうだし、それこそトイレやらお風呂、ご飯の時くらいにしか姿を現さないだろう。


 つまり本当の意味で二人きり。とてもじゃないが思春期の男子高校生が置かれていい状況じゃない。ただでさえ……最近また余計に由那の無防備さが目立っているから、ドキドキさせられてばっかりだというのに。


「温泉で一回一緒に入ったでしょぉ!? あの時はなでなでもぎゅっもしてくれたじゃんかぁ!!」


「その時とは状況が違うっての! その……俺だって男なんだぞ。いくらなんでもお風呂場だなぁ」


「ゆーしが男の子なことくらい分かってるもん! ね、お願いだから一緒に入ろ? もう今日はゆーしと少しも離れたくないよぉ!!」


「いーや、全然分かってない。お前は全然理解できてないぞ」


「そんなことっ────」


 意地でも俺とお風呂に入りたい由那と、逆にそれを阻止したい俺。両者の口論はやがて声量が大きくなっていき、ちょっとした口喧嘩のようになりかけて……


「俺が普段からどれだけお前にドキドキさせられてると思ってんだ。お風呂で密着水着イチャイチャなんて……そんなの、正気を保てるわけないだろ! ただでさえ普段からドキドキさせられっぱなしなのに!!」


「へっ!? あ、あぅ!?」


 正直な気持ちを俺が吐露したその瞬間から、由那の声量が落ち始める。


 まるで借りてきた猫のようにもじもじしながら、少しずつ大人しくなっていって。


「お前、本当にいい匂いするし……身体も色んなところ柔らかいし! 普段からその……む、胸も当たってるし。男子としては色々と思うところがあるんだからな!」


「う、うぅ。ふしゅぅ……ご、ごめんなしゃぃ」


 かあぁ、と赤面した彼女は珍しく弱っており、いつものような迫力が無い。それどころか縮こまるようにして髪をいじいじし始めると、やがて目すら合わなくなった。


「で、でも……そんなこと言ったらゆーしだって、その。普段からかっこよすぎるもん。いっつも私はふにゃふにゃにされて……」


 そうだ、忘れていた。





 コイツ……いつも責めてきてばかりだったけど。俺の方からグイグイ来られると死ぬほど弱いんだったな。

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