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210話 おねむな彼女と

210話 おねむな彼女と



「じゃあ、また明日。朝ごはん係とやらに任命されてたけど、明日はどうするんだ?」


「もちろん作りに行くよ〜! だから六時とかに行くことになるかな?」


「相変わらず朝強いなぁ。俺絶対そんな時間に起きるの無理だ」


「にへへ、私も昔は弱かったんだよ?」


「え、そうなのか?」


 時間は経過し、午後七時半。


 昼ごはんは軽く済ませ、夜には母さんが帰ってきた記念に加えて由那に対し日頃のお礼と称し、ピザをとってくれた。


 ピザにジュース、ポテトやナゲットと軽く宴会状態になり「ピザパーティー」とも呼べるそれになってからは、それはもう凄い盛り上がり様で。特に母さんと由那はやはり打ち解けるのが本当に早く、俺と辿ってきた日々の思い出を話された時は隣から全力で静止したものだ。


 そして様々な話をし、母さんがお酒を開けてからしばらく。酔い潰れて寝てしまったのでリビングのソファーに寝かし、布団をかけて。その後の片付けは諸々俺と由那がすることになり、ようやくさっきそれも終えて自室へ戻ってきたところである。


「ゆーしのために毎朝お弁当作る習慣つけたら早起きになっちゃって。気づいたら早く起きることに全く苦手意識無くなったんだぁ〜」


「っ! そ、そうか。俺のため……か」


「あ〜、ゆーし照れてる! えっへへ、ゆーしのためって言葉、彼氏さん的にはやっぱり嬉しい?」


「そりゃ、そうだろ。由那が俺を振り向かせるために頑張ってたってのは聞いたけどさ。俺はその過程までちゃんと全部知ってるわけじゃないからな。あの美味しい手作り弁当の裏にも俺のための努力があったって聞くとやっぱり……な」


 お腹もいっぱいになり少し眠そうな由那にもたれかかられながらそう言うと、「じゃあこれからももっと、ゆーしのために頑張るね♡」と。そう言って、肩に頬を擦り付けてくる。


 トクンッ、と胸が高鳴るその言葉に思わず頭を撫でて、手を握る。そうやってくっついているだけで由那の熱い体温はどんどん伝わってきて、気づけばぽかぽかに火照り目を閉じかけている。


 由那の家の門限はそろそろ近い。今日はまだお泊まりを許されていないし、この後ちゃんと帰ってもらわなきゃなんだけどな。このままだと寝てしまいそうだ。無論、俺も含めて。


「オイ、寝るなー? ぼちぼち帰るんだぞー」


「むぅ、やだあ……ゆーしと引っ付いてたいぃ……」


「ダメだって言われたろ。明日からは泊まれるんだから。ほら、そろそろ帰る準備するぞ」


「う゛〜ぅ。ゆーしお家までおぶってよぉ」


「お前なぁ……」


 ああ、これダメだな。完全におねむモードだ。


 由那は一度これに入ってしまうと中々シャキッとしてくれない。ドロドロに溶けて熱々になってしまった身体を擦り付けては、意識が無くなるまで甘えてくるだけ。このままでは帰らせるどころではなくもう立ち上がることすら難しいだろう。


「じゃあ……目覚めのキス、シて?」


「ぐぬぬ、ワガママだ。本当ワガママだぞ」


「……ダメ?」


「っ。ダメじゃ、ないけど」


「やったぁ。ぽかぽか湯たんぽ由那ちゃんぎゅっ、しながら熱いキス、いっぱいシよ? まだ時間あるもん。残りの時間はゆーしの胸の中で過ごしたいにゃあ……♡」


「はぁ。分かったよ、彼女さんの頼みだからな。というかぶっちゃけ俺も満更でも無いし」


「そういう素直なところもだいしゅきぃ。ね、甘々のキスだからね? 抱きしめながら何回もするやつじゃなきゃ、ヤダよ? ぎゅーーーっ、て。いっぱい抱きしめてぇ」


「はいはい。喜んでさせてもらいますよ」


 というか、これからは一晩コイツが隣にいる日が増えるんだよな。


 そんな時にもしこういう事を求められたら。もう″時間″という縛りで繋がりを終わらせることはできない。


(持つか? 俺の理性……)


 気を引き締めないと、このままではいつまでも由那と抱き合ってキスをし続ける、そんな永遠の甘々だけで夏休みが終わってしまいそうだな。なんて、思いつつ。


「ん、ちゅぅ……♡」





 差し出された彼女の唇を奪った。

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