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2話 高校生活は、この美少女と共に

2話 高校生活は、この美少女と共に



「え〜……みなさん、まずはご入学おめでとうございます。これから本校での高校生活が始まっていく訳ですが────」


 パイプ椅子の立ち並ぶ体育館。総勢三百人にも登る新入生達が集うそこで、校長先生のありがた〜いお話が繰り広げられている。


 中には既に寝てしまっている者、何が面白いのか熱心に聴いている者、友達と喋っている者など、有り様は色々。


 そしてそんな中、俺はというと。


「なあ、あの二人ってさ」


「まあそう……なんだろうなぁ。くそ、せっかく可愛い子がいたと思ったのに……」


「えへへ、ゆーしっ♡」


「おかしい。絶対おかしいってこれは」


 周りからヒソヒソ話で噂されながら、寄り添い合って……いや、合ってはいないなこれ。一方的に抱き付かれてるだけだ。


 同じクラスになっていたところまではまあ、いい。なんとなく予想はついていたから。けれど出席番号順で並んでいるこの列で頭文字「え」と「か」が隣は流石にやり過ぎでは? いや、まあ確かに近いけども。間に誰もいないってことも無いだろう。というかいたはずだぞ。クラス発表の紙を見た時には、四、五人くらい。


「ゆーしっ。ゆーしだぁ……えへへっ」


「なあオイ由那(仮)。俺達の間にいた奴らはどうした? お前絶対席ここじゃないだろ」


「変わってもらったんだぁ。どうしてもゆーしの隣に行きたいって言ったら、簡単に変わってくれたよー? ねー!」


「ひゃ、ひゃいっ!」


「か、かかか変わりましたっ」


 ああなるほど。間にいたのはチェリー達だったか。コイツの顔にやられたな。


 というか、今更なんだが。コイツ本当に由那で合ってるのか? まあずっとここを離れてた俺の名前知ってたし、白い髪も整った容姿も、昔の記憶と似通った部分はある。


 だがあまりにも性格がかけ離れすぎていて、未だに彼女であると認識しづらい。俺の知っている由那はもっとこう、ツンツンしてた。「アンタなんかと遊びたくなんて、ないんだからね!」とか「べ、別に嬉しくなんかない!!」とか。ツンデレ全開のセリフばかり吐いていた由那が、今はこれ?


「(仮)なんてひどいよぉ。私、ゆーしと会える日が来るのをずっと楽しみにしてたんだよ? ゆーしとは連絡先も交換できてなかったし、寂しくて……ずっと、帰ってきてくれないかなって……」


 やめろ、しおらしい顔をするな。上目遣いをするな甘えてくるな抱きついてくるな。とてつもなく目のやり場に困るんだよ。


 いや、可愛いんだぞ? 俺が今まで見てきた女の子の中で群を抜いて一番だ。ただ、そんな子が昔ツンデレだったあの幼なじみで、しかも今はなぜか俺にこんな風になっているなんて。急展開すぎて頭がついていかないって。


「今まで寂しかった分、いっぱいゆーし成分を摂取するんだもん。ぎゅ〜っ」


「やめろ、やめろって。見られてるから! お前、恥ずかしくないのか!?」


「ゆーしと噂立てられること? えへへ、私は……嬉しいけど……」


 ぽっ、と頬を桃色に染めながら。恥ずかしさを見せつつも、その手は離してくれない。腕と豊満な胸で俺の左腕をがっしりとホールドしてきて。むにむにと押し付けてくる。オイ、ダメだ。これ左腕が幸せな感触に犯されてる。なんかこのまま取り込まれそうで怖い。


「ゆーしの匂い嗅いでたら、ちょっと眠くなってきたぁ。ね、このままお昼寝してもいーい?」


「ダメに決まってるどぅらろぉ!? オイ、ウトウトするな! コクンコクンするなって!!」


 ああ、まずい。俺の高校ライフが初っ端からこけそうだ。


 校長の話がどうでもよくなり始めたみんなが、少しずつ自己紹介も交えながら隣の人と喋ったりして友達を作り始めてる。ただでさえ地域の友達がいない俺はここでしっかりと頑張っておかなければいけないのに。腕にコイツを引っ付けた状態で話しかけに行ったりできるはずがない。


「すぴぃ……」


「クッソ。何なんだ、マジで……」




 もうヤダ。おうち帰りたい。

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