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129話 女帝と恋人3

129話 女帝と恋人3



「この恋人のタロットは神話のアダムとイヴを元として書かれたものなのですが、二人が裸でいる様子は嘘偽りのない純粋な心、飾ることのない正直な気持ちを示しています。どうやら彼氏さんは嘘のつけない正直者タイプみたいですね」


 正直者……。人から言われるといまいちピンと来ない。ただ嘘つきと言われるよりはいい気がするし、多分悪い意味はないのだろうが。


「そしてこのカードの本題ですが、表されるのは自分の気持ちに素直になれ。それこそが願いを叶える近道だ、という意味を持っています」


 そしてここからが逆位置の示す最終的な占い結果です、と。そう付け加えて、彼女は恋人のタロットの逆位置が見せた俺の本性を口にする。


「逆位置が示すのは消極的な気持ち。自分に自信がなく、どっちつかずでハッキリしない心情がチャンスを逃してしまうということです。どうですか? 心当たりの方は」


「……うっ」


「ふふっ、あるよねゆーし。いーっぱい♪」


 グサリ、と胸を貫かれたような言葉の鋭さに、思わず顔を背ける。


 完全に言い当てられてしまった。そうだ、今でこそ俺は由那の彼氏になることができたが、ここまで中々に紆余曲折あった。


 再開してから付き合うまでの期間だけでいえば数ヶ月と短いものだが、俺は幼なじみとしての彼女からずっと向けられていた好意に気づけなかった。再開してからも幾度となくアプローチをされておきながら、それを「幼なじみとして甘える延長線上」と思い込み、由那が俺なんかを好きになるはずがないと決めつけて。


 消極的で、自分に自信がない。まさにその通りだ。今だってたまにそれは表に現れてしまっているような気がするし、多分そのことも由那に見抜かれてる。


 由那は俺のことをかっこいいと言ってくれるけれど、今までこんな俺を好きになってくれたのは彼女一人。浮いた話もまるでなかったし、正直初めての恋愛でまだ困惑することも多い。


「心当たり、山ほどあります。胸にグサグサ刺さりました……」


「ふふふ。やはりそうなのですね。けどそう悲観することもありませんよ。だって実際今あなたの隣に彼女さんがいるのは、そのどっちつかずから脱却した行動を取ったからなのでしょう?」


「つっ!! そ、それは……」


「安心してください。あなたが自分に自信を持てなくても、隣には彼女さんがいます。どれだけあなたが自分を低く見積もっても、好きが揺らぐことはありませんよ」


 うんうん、と由那が頷く。


 なんか励まされてしまった。相性占いをしてもらっていたはずが……何故か俺だけ少し心にダメージを負っている。


「さて、では肝心の相性ですね。彼氏さんはさっきので少し落ち込んでしまっていますが、相性はかなり良好です。彼女さんは引き続き好きを伝えることを忘れずに。彼氏さんは受け身になっているばかりではなく、もっと自分から愛を伝えてあげてください。今までも伝えていたかもしれませんが、もっとです。もっともっと、彼女さんに負けないくらいに。そうすれば……お二人の仲は、とても長く続いていくことでしょう」


 もっと積極的に、か。


 俺なりに結構頑張っているつもりだったんだけどな。好きはちゃんと伝えて、言葉だけではなく行動でも示して。最近は特に、自分でも遠慮がなくなってきていて少し怖いくらいだ。


 でも……そうだよな。由那は絶対俺のことを拒絶したりなんてしない。彼女の彼氏として、もっと自信を持とう。


 したいこと、してもらいたいこと。全てに素直になって、好きを繰り返す。────由那とずっと一緒にいるために。


「占い、受けてよかったでしょ? ゆーしっ」


「……そう、だな」


「ありがとうございました。興味がおありでしたら、また部室にも遊びに来らしてくださいね」


「はーいっ! ゆーしのヘタレ癖がちゃんと治ったかの報告も兼ねてまた! 絶対来ますね!!」


「うっ……」


 せめて由那にこの人へチクられることのないくらいには、頑張らならなきゃなと。




 そう、強く思った。

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