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【一章完結】CROSS OVER 管理人 ~異世界のお悩みは異世界に解決してもらいましょう!~  作者: マロ
管理人たちのあれこれ アタオカ vs ガチガチルール
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勝者と顛末

「で? 一体なんなのかしら? お笑いコンビ? 仮装大会? いつからここは低俗な学園に成り下がったのかしら?」


雫の冷気をまとった視線がプリンスや副会長を貫く。最初に声をあげたのは緑だった。


「僕はさ、プリンスとして他の生徒と隔離された高貴な生活もいいけど、同じ年代のやつらと馬鹿なやり取りするのもいいなって思うんだよ。」


「あら? それはつまり、プリンスを降りたいってことでいいのかしら?」


「……降りてもいいかな。」


「へぇ? りお、あなたは?」


「俺……は、緑ちんが降りるなら降りてもいいよー。まぁ、他のプリンスが来たところでめんどいし。」


「っ! 尚也、あなたは?」


「私は……正直、何を言ってもツッコまれるんです。もう疲れました。私は根っからのボケ体質なのです。」


「尚也。あなた何を言ってるの?」


「ああ! ほら、またツッコまれました!」


ガンガンと尚也が頭を机にぶつける。


「尚ちんはちょっと病んでるから! ごめんねー!」


そんな尚也を引きぎみで押さえるりおと、「何度見ても滑稽だ! エクセレント!」と叫びだす緑に、雫がゴミ虫を見るかのような視線を投げ掛けた。


「プリンスは皆失格ね。しかたないわ。これからは、生徒会が学園をまわすわよ。いい?……ねお?」


「……っ!」


「ねお……あなた。」


「私は会長についていくつもりです! どこまでも! ただ、……っ!ただ、恋……司城恋もなかなかいい友人でして……会長と司城恋が仲良くならないかなぁて……す、すいません!」


「……認めない。認めないわ。」


雫の冷淡な声が響き渡った。


           ◇


冷たい空気の流れる体育館で、生徒の名前が一人一人呼ばれていく。そして、最後の一人の名前が告げられた。


「……司城恋をはじめ、以上が、この高貴な学園を低俗な学園へ堕落するのに助力した生徒たちで間違いありませんね? 名を呼ばれた者は1週間の停学処分になります。なお、復学後、更正の認められない生徒はただちに学園から去っていただきます。以上。」


雫の冷たい声が静かな空間に響き渡った。


「異論のある者は出なさい。直ちに退学処分です。」


口を開く者はいなかった。生徒たちは、真っ青になって下をうつむいていた。


「よろしい。」


雫が艶やかに笑みをこぼしたときだった。


「はい!」


一人の生徒が手を上げた。雫の目が恐ろしいほど見開かれる。体育館にいた生徒の口からいくらか悲鳴がこぼれ出た。


「あら……あなた、見ない顔ね。私が留学中に転入しときたのかしら?」


「まあそんな感じです。あまりこの学園のルールに詳しくなくて……。高貴な学園?でしたっけ?」


「ええ。この上奏院学園は国を動かす重役たちの子息令嬢が通う紛いなき高貴な学園です。そして、この学園の理事長の娘である私とその分家のねお、加えて濱谷グループ、祭田グループ、和田浦グループの子息たちは最も上位に位置するのが当たり前。これがこの学園の常識です。」


「なるほど! それが上奏院学園の常識なんですね!」


「ええ、そうー「随分世間の常識とは違うのでびっくりしました。まさかここだけ治外法権なんですか?」


「何をいっー「親の権威をステータスにしているようですが、もしもその盾がなくなったらどうするのでしょうか? 上に立つものは後ろ楯が大きいぶんそれを失うのも早いというのに。よく謝罪会見とかあるのに、どうして上に立つものはその教訓を生かせないのでしょう? あ! なるほど! お馬鹿さんしか上には立てない、とそういうルールがあるのですね! 失礼しました、ここは治外法権でした!」


「あなたねええええ!!!」


雫が完全にきれたときだった。閉められていた体育館の扉がガラッと開かれた。


「遅くなりましたー!集会前にトイレ行ったんですけど、トイレットペーパーがなかったので送れました!」


司城恋の登場だったー。


「司城恋??……はぁ?トイレットペーパー?」


「あれ! 会長さんですよね? まさか、私いないの気づいていませんでしたか!? 会長さんともなると全校生徒記憶しているだろうから正直に言ったんですけど……損しちゃったなぁ……」


「は、はあ? 私を馬鹿にしているのかしら?」


「会長!」


「な、何よ!」


「正直者が馬鹿を見るのはダメだと思うんです!! 私は正直に言ったので見逃してください!!」


「知らないわよ! ダメよ!」


「会長は、正直者にバカを見させる派ですか!? 見損ないました!」


「だから、なんなのよ! そんな派閥知らないわよ!」


雫が真っ赤になって言い返したとき、


「プッ。」


どこからか笑い声が漏れでた。


「誰?! 出なさい!」


「会長!今のおならですよね!?また出させようとしているんですか?」


「だからなんでそうなるのよ!!!」

 

「くっ。あははははは!」


一人が笑えば、連れて他も笑う。笑いの連鎖が体育館中に響き渡っていた。


「黙りなさい、皆揃って退学にする「会長。」……わよ」


雫の肩にねおが手を置いた。


「ねお?なんのまね?」


「会長。皆いなくなったら学園は終わりです。生徒がいるから学園が成り立つ。皆が団結したら赤信号も青信号になるんです。むしろ今赤信号なのは私たちです!会長!っ……私は、会長のつくる学園を終わらせたくはありません!」


「ねお……」


「お願いです。どうか、司城恋と話して見て下さい。悪いやつじゃない……です。」


雫が唇をぐっと噛んだ。



           ◇



数日後ー。


「ねぇねぇ、私のボケどうかしら?」


「さすが、会長です! まさか、生徒集会で虎に乗ってくるとは!」


「ふふ、軽トラの話をしたから。」


キャキャとはしゃぐ女子たちに、りおがすかさずツッコむ。


「いや、影響されるのはや!フラグ回収はや!」


「あら、りお、さすが! ツッコミ王子ね!」


雫が嬉しそうに笑う。


「私ね、恋さんと昌やん先生を見てあんなに笑ったのはじめてだったのよ。今や推しコンビだわぁ。」


「私は、会長とコンビを組みたいです!」


完全に、笑いの世界に呑まれたメンバーがいた。






           ◇


「ふーん。笑いが勝つんですね。」


「意外だったか?」


「別に。あの学園もプリンスなんて組織がある時点でもともとギャグ路線でしょうよ。」


「,ま、まあな。w」


「まあ、間近で見させてもらいましたが、面白かったです。けれど!! ああ、もっと意外性を見たいです!」


「……実験もほどほどにしろよ。」


「次はどんな実験をしましょうかねー?」


そう言ってイチは新たな実験項目を考え出した。

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