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目と口とたまに僕

目は口ほどに君を思う。口は目ほどに僕を探す

作者: イソジン

たまさんと会えなくなってから半年がたっていた。


電話は繋がらずホームでも会うことは無かった。時間をずらして見たり、土日に学校でもないのに駅に行ったりもした。

街を歩く時はもしかしたらばったり会うんじゃないかって、目で探したりもした。

会えなくなってから3ヶ月たった時、僕はとうとう諦めた。

諦めてしまってから3ヶ月が経ち、季節は初夏から冬になっていた。受験もすぐそこまで来ている。

正直受験にやる気なんかない。

世界はまた元に戻ってしまったようだった



誰かに合わせる生活。好きでもない音楽が流れるイヤホン。定刻通りに来る電車。

いなくなってから気づくものもある。たまさんがいた、その日々は鮮明にそして色鮮やかに思い出す度に僕の心を締め付ける。

「好きだったんだな…」

人の少ないホームで口が空いてるかどうかぐらいの声でボソッと呟いた。

息は白く、ふわっと溶けるように消えていく。

そうだ。恋をしていた。自分の心がわかる彼女に。悩みがわかる彼女に。2ヶ月の儚い恋心。話したいことは沢山あったのに。ちょうど何とかNumberの失恋曲が流れ始めた。



そんなときパーッと乾いた風がホームを抜ける。風が吹いてきた左側を見る。電車が来た訳では無いようだ。

くしくもたまさんと出会った時に似ていてデジャブを感じる。


「天津くん」

右から声が聞こえる。聞き馴染みのある声だ。


振り向くとそこにはたまさんがたっていた。

僕に手を振っていた。

「たまさん???いなくなったんじゃ…」

「ごめん。遅れちゃった。」

顔の前で手を合わせ少し頭を下げる。

そのままの流れでサングラスをとる。


そしてたまさんは"瞬き"をした。

咄嗟に目をそらす。これは自分の癖だ。


「たまさん…目…」

「見えるようになったんだ~。いきさつを話すと長くなるんだけどね。どれくらいから聞きたい?」

「最初からでお願いします…」

そう伝えると、たまさんはニコッと笑ったあとホームのベンチにドサッと座る。

もう手には杖はない。


いっこ隣の席をトントンと弾むように叩いたあと

「座りなよ」

という。

言われるままに座るとたまさんはこの半年の話を始めた。


難しいことはよくわからなかったがどうやら手術が急に決まり入院していたとのことだった


2人とも顔を合わせることなく線路の方を見ながら話を続ける

「電話沢山したんですよ…」

「ごめん。目が見えるようになるからスマホに変えた時電話番号変えちゃって、天津くんの電話番号覚えておけば良かった。」

「ずっと探してたんですよ…」

「ごめん。リハビリしてて学校も休学してたし、この時間電車乗ってなかった」

少しの沈黙の後、たまさんは僕の方を見る。

「ねぇ、天津くん。さっき言ってたことなんだけどさ。」

「どれですか…」

「風が吹く前だよ。あの声で天津くんだってわかったんだ。」

「…」

「好きだったって話。もう好きじゃないってことかな。」

「声で考えてることわかるんじゃないんですか。」

「うん…でも泣いてるし…6ヶ月もほっといちゃったから…顔の表情とか考えると自信がなくて。」

言われて気づいたが涙がこぼれてしまっていたらしい。


意を決してたまさんの方を向いて目を見る。

「僕"も"好きですよ。たまさん」

涙を拭いながらそういうと、たまさんはフフッと短く笑ったあと僕の目を見て

「良かったっ」

と言った。

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