8 読書の時間
ふぁぁ~。と多くな欠伸をする。
向かいに座るロクシーがクスリと笑った。
「だらしないですわよ。」
「うっせぇ、読書なんてしねえからなぁ。」
持っていた本を閉じる。
読めない文字もあるから飛び飛びでしか読めない俺にとっては、これは、解読にも近い。勿論、内容など入ってくるわけも無く、適当に文字をおっているだけだ。
もっとレベルの低い本もあるだろうが、ロクシーに聞くのもなんだか癪だった。
こんなものも読めないの~?何て、言われれば、ぐうの音も出ない。
しかし、凄い量の本だ。
町にある本の全てを集めても、この量にはなら無いだろう。
それが所狭しと積まれている。そう、問題はそこである。
本は全て本棚に入れられるで無く、床に積まれているのだ。凄い高さに。絶対いつか倒れるだろうと言うバランスで立つ本の塔が幾つも。
本なんかに詳しくない俺でも分かる。
これ、絶対よくない。
「あの……この本は、お前が集めたのか?」
「いいえ。私のおじいさまや、お父様が集められましたの。」
「ふーん。この積み方は?」
「………あ、ええ。まあ、」
本から顔を上げずに適当に質問に答えていたロクシーがピクリと肩を揺らす。
本はそのままに、その表紙を掴む指にほんの少し力が籠められた。
これは……狼狽。
吸血鬼が狼狽えるほどの何か秘密が………
「おじいさまも父も、そして、私も、その……お片付けが苦手でして。」
「は?」
いや、まあ、秘密ではあったけど、そう言う……はぁ……
いや、ここで弱点とかポロッと出すようなロクシーじゃないことは、分かっていたけどさぁ、
「いや、でも、片付けとか、本棚に入れるだけ……」
「その本棚を……壊してしまったり、倒してしまったり、」
「固定しろよ!大切にしろよ!」
ツッコミどころ、があり過ぎて、思わず大声で叫んでいた。
本を投げなかっただけ、俺は冷静だ。
「いやですわ。そんなの面倒くさい。」
「いやいや、本探すとき大変だろ。」
「大丈夫ですわ。本の内容覚えてますし、何所に何があるかくらい覚えてますもの。」
「…………。」
そうだった、こいつ化け物だった。大変頭の良い奴だった。
そう言う人間離れしたこと裕に出来ちゃう奴だった。
でも、こいつ。
「お前、頭良いけど、馬鹿だよな。」
「あら、喧嘩うってますの?」
「お前、礼儀正しいお嬢様だけど、考え方野蛮だよな。」
「あらぁ、私を試してらっしゃるの?喜んでお引き受けいたしますよ。」
はぁーー、と深くため息をついて、立ち上がった。
「あら、何処に行きますの?」
「機材取りに、本棚造るぞ。」
「え?本棚なら、物置に。取りに行きますの?」
「いや、とりあえず、ここの掃除だ。お前、ここでまってろ。」
「ええ。」
本をその場に置くと、立ち上がった。
さて、掃除道具。片付けは出来なくても、掃除は出来るからな。ロクシーは。
掃除用具は揃っていたはずだ。
廊下の物置に、
書斎の重たい扉を押した。
「よしよし、首尾は上々………後は……」
俺は、こっそり、扉の隙間から………
ニンニクのたっぷり煮込んだ鍋をそっと押し込んだ。
そしてそのまま、
パタパタパタ………
硬めの紙で音もなく仰いだ。
きっと今頃中では、こんなことになっているとは知らず、ロクシーが優雅に紅茶を飲んでいるはずだ。だが、もう遅い!
食らえ……ニンニク攻撃…!!
ニンニクが大丈夫な人間でも少しダメージを受けるこの攻撃に、吸血鬼にが大丈夫なはずが無い!!
「ふふっ……ロクシー、待ってろよ………。」
まさか、この俺が急にやる気を出して、書斎を綺麗にするはずが無い!確かに一宿一飯の恩はあるが、と言うか、一宿一飯どころでは足りないほど、良い生活をさせていただいているが……
俺の復讐はまだ始まったばかりだ!!
このまま仰げば……
「くっさっ!!これ、臭っ!!」
「うわっ!!」
急に扉が大きく開いて、ロクシーが飛び出してきた。
鼻をつまんで手をパタパタしている。
「臭いですわ!何事ですの!?」
「チッ………効かねえか。」
「効きますわ!鼻がとれるかと思いましたの!と言うか、動物ならきくでしょうこの攻撃は!人間もきくでしょう!!」
「ああ、俺は、絶対いやだ。」
「何故!何故自分がされて嫌なことを併存と人になさるのですか!」
………。いや、吸血鬼にそんなこと言われても。
しかも。俺の親殺したこいつに。
「何故……何故って……これが復讐だからだよ!」
「っ………ええ、そうでしたわ。あなたには復讐を許していましたわね。ですか!!」
ロクシーはポケットから白い布を取り出す。
それを俺に渡すと、
「私、慈悲深い吸血鬼ですの。ですので、あなたにはこれをあげますわ。さて、復讐をしても良いと言いましたが、復讐の復讐をしないとは、言ってませんでしたわね。」
はい?
はい?
ロクシーは意味分からないことを言うと、俺の首元を掴んだ。
嫌な、予感………
「さああて、よろしいですか、お鼻の覚悟は……」
「え、いや、ちょ……」
「行ってらっしゃいませ。」
ロクシーは思い切り、俺を部屋に投げ込んだ。
「くっさ!!え、くっさ!!ちょ、これ駄目!ロクシー、あけろここを!」
「いい気味ですわ、少々その香を楽しんでらっしゃい。」
「香じゃねえよ!臭っ!!」
扉の向こうこら聞こえる声にロクシーは肩をすくめた。
「全く。助けて正解だったのかしらね、この馬鹿息子を。」
***
こんにちは。まりりあです。
吸血鬼ってニンニク嫌いなんでしたよね。
何故だろう?知人にも、ニンニク無理という方がいらっしゃいますが、自分はニンニク好きで、まるごとでも行けるタイプなので、よく分からないですね!
さて、今回、遅くなりました。
ストーリー展開のスピードに困っていまして……何て、言い訳ですね。
それでは、またの機会に