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7 散歩道

遅くなりました。


その日は天気がよかった。

澄んだ青空が広がる。

そのしたで

「はっっくしょん!」

盛大にくしゃみをした。


「あ~、誰か噂してるな、全く、村にいないからって好き勝手言いやがって。」

くしゃみしたら噂されてるなどという謎の都市伝説を信じているこれはフィロック。ただいま吸血鬼との殺し合い生活を送っている青年であった。

ただいま山道をお散歩中である。

村に居たこと遠く仰いでいた山に今、まさに居るとは、

ロクシーの館の近く故、妖怪や大型の動物の危険も無いし、危険な場所はだいたい教えてもらっていた。

気楽に散策するには、ちょうどよかった。

居心地が悪かったから。

最近、子供の頃から住まわせてもらっていた喫茶店のほこり臭い屋根裏から心地好い豪邸に越してきて不満こそ無いが、いつまでも吸血鬼ロクシーに攻撃を当てられないどころか、美味しいご飯と清潔な環境で十分におもてなしされていて有り難いというか、申し訳ないというか、悔しいというか、なんとも形容しがたい気持ちになりつつあった。

うだうだと悩んではあー、やら、うー、やらと意味の無い奇声を上げ続け、遂には煩いと舘から追い出されたのだった。

曰く、夕方には帰ってこいと。

親か!と突っ込みたくなったが、両親共にいない俺にとっての『親』は世間一般的な親とあっているのか、その確信が持てずに、口籠もりした。

「まあ、良いんだけどな。別に……」

親がいなくて不便だとは思うが別に寂しいとかは無い。

と言うか、ロクシーへの憎しみが勝る。

彼が両親を殺したのに。

あいつが敵なのに。

手も足も出ないことが歯がゆい。

そして、両親が殺されたのに自分が生きることに必死でその死を悲しむことも出来なかった自分が今でももどかしい。

もっと強ければ、もっと賢ければ、もっと大人であれば。

もっともっとと自分に求めることに夢中で走り続けて、止まり方を忘れているような気がする。

それでも、今は良いと思った。

「さあて、次はどんな方法で殺そうかなぁ」

ニンニクでの攻撃はまだしたことが無い。後、十字架。

吸血鬼は無駄に弱点が多いがロクシーには効いていないようだった。

はたしてどんな攻撃なら効果を発揮するのか。

考えるととっても、

とっても……

「ワクワクするなぁ、どうしよう。料理になんか仕掛けるか?水銀混ぜる?でも、もう水銀持ってないんだよなぁ。じゃあ、出会い頭に十字架を。でも、効かなかったら鼻で笑われるだろうし、それはなんだか癪だなあ。逆に物理的に殴るとか、蹴るとか。確実では歩けど、通用するのかぁ?」

吸血鬼はただでさえ、謎が多い。

そこを考えて策を練って実行に移して、失敗して反省を糧に次の策を考える。

この決まったローテーションを続けることがとても楽しかった。

この気持ちを糧に、あいつを殺すために確実に進め。

草が生えた山道をもう一歩踏みしめた。



「あー、あ、やっと行きましたわ。全く、一日いましたら、仕事も出来ませんわ。ねえ、そう思うでしょう、フィロックのお父様、お母様」

「さあ、どうだか。」

「あの子が居ようが居まいが関係ないわよ。子供を人質に取ったつもりなら、そうはいかないわ。」

太陽の光が届かない地下。

銀の檻の中に2人の人間。

いや、詳しくは人間の形をしたもの。

「人質のつもりは無いわ。だって貴方たちには効かないでしょう。あの子じゃ。」

「分かってるならなんで。」

ロクシーは笑う。

にっこりとピンクの唇を湾曲させる。

白い歯ととんがった犬歯が、少ない光の中で光る。

「面白いからよ。あれほど面白い人間は見たことが無い。貴方たちも、そう思うでしょう?」

問いかけには答えない。

いや、答えられないのだ。

彼らにそんな感情は無いから。

「貴方たちみたいにつまらなくないわ。怒るし泣くし、悔しがる、千の感情を持つ人間はとても面白いわぁ、」

やっぱりあの子を連れてきて正解だった。

こんなにも楽しい日々を過ごせているから。

長い人生、刺激が無いとやっていけないのだ。

「もう、貴方たちみたいなのの相手はこりごりなのよ。仲間にも伝えてくれない?もう手を焼かせないでって。」

「それは出来ない。」

「そうよ。それが私達の仕事だもの。」

「仕事……ねぇ。」

この世の仕事は皆誰かのためになっている。

では、彼たの仕事は誰のための仕事なのか。

特に彼らのような存在は、その仕事の意義が求められる。

しかし、彼らの意義など、もう随分と昔に消え去っていた。



***

まりりあです。

今回はまさかの両親登場!!

皆様、誤字脱字がありましたら、教えてください。 

それでは。またの機会に



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